コラム


by katorishu
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

【昭和エロ・グロ・ナンセンス】第2章 演劇篇(4)】テレビ・バラエティの元祖

8月30日(木)
■関東大震災後の昭和初期の世相と、東日本大震災後の世相を比較考証した【昭和エロ・グロ・ナンセンス】をWEBRONZA(朝日新聞発行のWEB誌)に連載しています。第2章の演劇編4がアップされました。サブタイトルは「テレビ・バラエティの元祖」。
戦後のテレビバラエティをはじめ世相やマスの嗜好、社会現象などで、双方に酷似している面が多く、驚くと同時に怖い気もしてきます。
戦前の「エロ・グロ・ナンセンス」の果てに満州事変がおこり、一気に軍国主義に傾斜していくのですが、この面でも似た兆候を見出せます。
この国がどこへいくのは先のことは、じつは誰もわからないのですが、漂流状態であることは否定できません。
以下、WEBRONZA、演劇編4「テレビ・バラエティの元祖」の書き出し部分のさわりを掲載します。興味のある方はWEBRONZAをのぞいてみてください。

★「割どん芝居」という言葉がある。舞台中央から左右に開く緞帳の前で演じる小芝居、寸劇のことだが、エノケンは割どん芝居をうまく使った。例えばカーテンに絵を描いた物の前で芝居をする。これによって頻繁に場面転換をすることが容易になり、スピード感のある舞台をつくりだせたのである。
 「島村をはじめレビュー作家の多くが文学青年だったこともあるのだろうが、彼らの書いた作品は、音楽的には主題歌がある他は通常の台詞劇と変わらず、構成的にも内容的にもレビューと呼べないものが多い。通常の台詞劇と明らかに異なるのは、レビュー譲りのテンポの速さで、30分~60分程度の作品で10前後の場面転換がある」(『新興芸術派とレビュー』中野正昭)
 この形式はそのまま現代のテレビドラマの構造と同じである。事件、風俗など時事性をもりこんだ「情報バラエティ」にもつながるもので、カジノ・フォーリーの試みた斬新な舞台は、今のテレビのバラエティ番組の元祖といってもよい。
 カジノからプペ・ダンサントなどをへて新宿ムーラン・ルージュへとつながる「軽演劇」の流れのなかから、戦後のテレビ創成期の番組を担う脚本家、台本作家、プロデューサー、演出家などが育っていったのである――。

★【庶民の欲求不満にこたえたレビュー】
 カジノ・フォーリーが起爆剤となって起こったレビューブームの内容は、「和洋ジャズの合奏」と「エログロ演劇」の2本柱であった。雑誌「文藝春秋」(昭和5年1月)はコラム欄で、浅草の玉木座、帝京座、遊楽館、江川大盛館、江戸館での「諸芸演芸大会」や「日本バラエティ」などに触れ、とりわけ「和洋ジャズ合奏」は近来の傑作であるとする。
 「先ず、幕が開くと、ジャズ・バンドと、三味線バンド(ってのも可笑しいがつまり三味線引きが四五人)ズラッと並んでいて、流行唄や都々逸なんどを賑やかに演奏する。之に連れて、一座の花形歌手(安木節の)が、独唱や踊りを演る。かと思えば、突如芝居がかりの茶番それを引き抜いて、板東流の大立ち廻り、コレたるや、女軍が伴天に猿股のスゴイいでたちで、手に手に、コン棒を持ってヤアヤアとやる、伴奏は例の、剣劇音楽、チャンチャンドンドンと云う勇ましい奴。いろいろと手を代え品を代えて、たっぷり御覧に入れる。一日の労苦を終えた労働者など之を見れば成程タンノウするであろうと肯かれる」
 新奇さを冷やかしつつも、一定の評価をしている。マスメディアのあつかいには賛否両論あったが、ひょっとすると時代の閉塞感を切り開く端緒になるのでは、という期待も生まれつつあった。

★【震災を契機に変わった大衆心理】
 以下はWEBRONZAで……

by katorishu | 2013-08-29 12:49 | 文化一般