コラム


by katorishu
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劣悪な労働環境のアニメ制作現場で、過労による自殺が労災認定。例外であるのかどうか

 4月19日(土)
■新宿労働基準監督署が18日、東京都のアニメ制作会社「A―1 Pictures」に勤め、辞めたあとの2010年10月に自殺した男性(当時28)について、過労による欝病が原因として労災認定したとのこと。(日経)。
担当の弁護士によると、男性は正社員として06年から09年12月まで勤務していたが、信じられないような超過勤務を強いられていたようだ。その男性の通院した医療施設のカルテによると、「月600時間労働」との記載があったとか。

■以前から、一見華やかなアニメ業界の裏側で、過酷で劣悪な労働が行われているといわれていたが、海外での日本アニメの評判がよくなるにつれ、改善されているのかと思っていた。この会社に特徴的なことか、ほかのアニメ制作会社にもあてはまることなのかどうか知らないが、いわゆる「ブラック企業」が云々されるなか、アニメ制作の現場は低賃金、長時間労働が普通」になっているという声も聞く。





■新宿労働基準監督署では、時期を不明としつつ、在職中に男性は欝病を発症し、そ前の2~4ヶ月に少なくとも100時間を超える残業があったと認定した。男性が在職中に控えた記録によれば、それまでの半年の残業時間は月134時間から、多いときで344時間に上ったという。弁護士によれば、「家に帰れないこともしばしばで、残業代が支払われた形跡もない」とのこと。7日連続で会社に泊まったり3ヶ月間休みがなかったこともあったという。基準署の労災認定に対して会社側は「認定が事実であるとすれば予想外であり、判断理由も不明のためコメントできない」としている。

■詳細はわからない部分もあるが、労働基準監督署が「認定」したからには、いい加減な調査であるとは思えない。海外に数多くでていく日本製のソフト制作の現場がこんな状態では、この業界の発展の阻害要因になる。この一社だけの問題で、他は「まっとう」な労働環境で、かつ賃金も相応に払われているといいのだが。

■もう20年近く前、アニメの下請け制作会社を取材したことがあるが、「低賃金」「長時間労働」は当たり前で、「そうしないと経営が成り立たないのです」と経営者は語っていた。
アニメ業界に限らず、一見華やかに見える業界では競争が激しく、利潤をだすため社員や派遣、アルバイトなどを酷使する例は多い。『女工哀史』の時代にもどらないよう願いたいものだ。そのためには、しっかりした法的整備をすることが急務である。政治家こそ、こういう問題に切り込むべきなのだが、こういう地味なことは票に結びつかず、「輸出産業振興」の立場から、見て見ぬふりをしている――としたら問題である。
by katorishu | 2014-04-19 13:32 | 映画演劇