NHKの連ドラに触発されてレイモンド・チャンドラー原作の映画『ロンググッドバイ』を見た。
2014年 04月 24日
■先週の土曜日、NHKで放送されたレイモンド・チャンドラー原作の土曜ドラマ『ロンググッドバイ』(5回連続)を見た。チャンドラーはフランスのジョルジュ・シムノンとならんで僕の好きなハードボイルド作家で主要作品はだいたい読んでいる。(シムノンはいわゆるハードボイルド作家に入らないかもしれないが)。この作品、日本での映像化は冒険だな、うまくいくのかな、と思いつつ見た。率直にいって、凝った映像が現在のテレビドラマでは出色であったものの、台詞がハードボイルドの文体からややずれているという印象だ。
■見比べたくなって、「脳休め」に本場アメリカで作られた映画『ロンググッドバイ』をDVDで見てみた。1973年、ロバート・アルトマン監督により映画化されたもので、私立探偵フィリップ・マーロウを演じるのは エリオット・グールド。映像に凝ってない分、原作が発表された当時の時代色がでていて、独特の音楽とアンニュイが漂い、悪くなかった。第1回を見た限りでいうのだが、テレビドラマには、どうもアンニュイの空気が不足している。原作のもつ軽妙洒脱な台詞の応酬も、もう少し欲しかった。脚本担当の渡辺あやさんは才能ある脚本家と聞いているが、ハードボイルドを書くのは恐らく初めてなのだろう。
■じつはこの作品、2014年に日本でテレビドラマ化されていたそうだが、見ていない。この作品(小説)をめぐって賛否両論があるそうだ。チャンドラー自身の自伝的要素をもつ。僕のなかでは『さらば愛しき女よ』の次に好きなチャンドラー作品だ。僕の読んだ原作は映画の字幕が専門である清水俊二の名訳。「ギムレットには早すぎる」や「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」、等々、名台詞があって楽しい。英語も読みやすいので、時間があったらKINDLE版で読んでみたい。内容についてはここでは敢えて触れないことにする。
■NHKドラマは連続で、村上春樹訳を使っているようだ。そのせいもあってか清水俊二訳のもつ、気の利いた台詞の応酬や、アンニュイの空気が不足しているのかもしれない。村上春樹という作家をあまり好きでないという僕の好みの問題かもしれないが。
連続ドラマの第一回を見ただけなので、立ち入った評価はさしひかえたい。今後の展開次第で面白くなり、映画とは違った世界を描きだすかどうか。お手並身拝見である。
■僕の好きな俳優の浅野忠信の連続ドラマ発主演なので、今後の4回に大いに期待し、最後まで見てみたい。考えてみると、この10数年ほどの間に、日本の連続テレビドラマを最後まで見たのは『流星の絆』など数本。以前、数え切れないくらいドラマ脚本を書いていて、できるだけ他の人の脚本のドラマも見るようにしていたのだが、いわゆる「トレンディドラマ」が隆盛になったころから、テレビドラマを見なくなった。かわって映画は以前の数倍見ている。「ロンググッドバイ」はテレビドラマとして久々に興味をそそられる素材なので、最後まで見てみよう。その上であらためて感想等を記したい。