コラム


by katorishu
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急逝された役者、林隆三さんへの追悼文

 6月10日(火)
■個性的な役者、林隆三さんが急逝された。4月に夕刊フジ連載の「自伝」の件でインタビュー取材をしたとき、大変元気そうであったので、報せを聞いてまさかという思いだ。夕刊フジ編集部からの依頼で林さんへの僕の追悼の言葉を書きました。前夫人の青木一子さんやお嬢さんの真里花ちゃんらと2度も僕の作・演出で舞台をやったので、ぼくなりの思いや思い出がある。
★YouTubeで林隆三、加藤登喜子、本田美奈子のシャンソンライブの一部を今朝、聞いたが、林さんてこんなに歌がうまかったんだ、とあらためて驚いた。そういえばブレヒトの「三文オペラ」のことをとっても楽しく語っていた。
以下、夕刊フジにのせた追悼文の全文を掲載させていただきます。

急逝された役者、林隆三さんへの追悼文_b0028235_1825737.jpg林隆三 追悼文
「林さんが亡くなられた」と聞いて一瞬信じられなかった。夕刊フジの「自伝」でインタビューしたのがこの4月、大変お元気そうで「役者はアスリートである。常に鍛えているものをお見せして、何かを感じていただく。やっぱりこれが基本ですよ」と若々しく語っておられた。俳優座養成所時代の同期の個性ある役者たち――地井武男、秋野太作、夏八木勲、原田芳雄、女性では栗原小巻、太地喜和子、三田和代(敬称略)などと青春の一時期、共に学べたことを誇りにしているとも語っていた。記したうちすでに4人が亡くなっている。元気であった人がこうもあっさりと亡くなると、「無常」というものを感じてしまう。
林さんが何より雄弁に楽しく語ったのは、28歳で早坂暁脚本の連続時代劇『天下御免』(NHK)にレギュラー出演したときのこと。江戸の才人・平賀源内が、仲間と難事件を解決するドラマである。現代社会を痛烈に風刺したもので、それまでのドラマにない創りで、評判となった。林さんの役は両国の橋の下でヒッピーのような暮らしをしている浪人・小野右京之介。
「また、あんなドラマをやれたらなア」と懐かしそうに話していた姿が目に浮かぶ。今年5月28日に『一夜限り 林隆三ライヴ』をやって次の仕事に弾みをつけると明るく話していた。
林さんには僕の書いたNHKの短編ドラマシリーズ中の1作『花標(はなしるべ)』に出ていただいた。役者は「声」だと僕は思っているが、林隆三という役者の魅力はまさに声であるな、と以前から思っていた。林さんがテレビのナレーターとしてよく起用されたのも、声に独特の味と聞く者を包み込む温かさがあったからだと思う。
林さんのお嬢さんで声優の林真里花さんや前夫人の青木一子さんとは、僕の作・演出で昭和に材をとった舞台を2度ほど上演したことがある。
林さんは2001年から宮沢賢治の朗読を全国で続けていて、北海道から沖縄まですでに二百ステージを超えたとのこと。今後もライフワークとして続けていくと力強く語っていた。あんなに元気そうであった林隆三さんが、もういないということが未だに信じられない。まだまだ色々な役にチャレンジできる味のある役者であったのに。ご冥福をお祈りいたします。
(脚本家・作家)

by katorishu | 2014-06-10 18:27 | 映画演劇