コラム


by katorishu
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竹中労の「美空ひばり」は母子二人で世間の偏見、蔑視といかに戦ったかの記録。感動的。

 2月23日(月)
■竹中労の骨太の評伝「美空ひばり」を一気に読了した。天才的才能をもった美空ひばりに対する見方が、大きくかわった。仕事の必要があって読んだのだが、蒙を啓かされたといってよい。母子一体となって世間の偏見、蔑視にいかに戦ったか、その闘いの記録であり、ルポルタージュの傑作といってよい。
竹中労の「美空ひばり」は母子二人で世間の偏見、蔑視といかに戦ったかの記録。感動的。_b0028235_2254434.jpg

■一例を引こう――NHKののど自慢に出演したひばりは、『悲しき口笛』をうたった。ところが、歌い終わっても鐘が鳴らない。失格の一つの鐘すら鳴らなかった。つきそいの酒匂正が放送局員に「どういうわけだ」とたずねると、「子供が大人の歌をうたっても審査の対象にはなり得ない」という返事であった。そして、「ゲテモノは困りますな」とつけくわえた。
 ひどい屈辱だった。ひばりの幼い魂に、怒りを烙印のように刻んだ(何がゲテものだ。もうこんなところで唄ってやるものか……)
 それから現在にいたるまで、ひばりは「紅白歌合戦」を除いて、自分のワンマン・ショーでなければNHKの番組に出演しない。

★敗戦後の「植民地化」された『文化』のなか、ひばりほど「日本の庶民の心情」に寄り添い、庶民の心情を歌った歌手はいない。ひばりはいう。
「歌います。すると、お客さまの心がピーンと伝わってくるんです。目をつぶっていても、隅のほう、大むこう、上手、下手、劇場(こや)のあらゆる場所から楽しい気分や悲しい気分が、はねかえってきます。それと一つになること、溶けこんでいくこと……。
どういうふうにって、具体的に説明しろといっても無理よ。そうねえ、網を打つでしょ。それをギューッと自分のほうにひっぱってくる。あの気分と似てrるんじゃない?でも、そのとき、自分のものは消えちゃうの。網のなかのお魚にね、自分もなっちゃわないとダメなのよ」

★昔、歌手の誰もが憧れの対象だった日生劇場からの出演依頼を、あんな「貴族的」で「上流社会」の匂いのする劇場では歌えませんといって断った。その意気やよし。

★美空ひばりが亡くなった夜、某テレビ局のディレクターと新宿のはずれのスナックで、4,5時間、ひばりの唄をカラオケで歌いまくったことを思い出す。

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by katorishu | 2015-02-23 22:58 | 映画演劇