「葛飾情話」
2005年 04月 17日
北区の赤羽会館大ホールで行われた歌劇「葛飾情話」を見る。
永井荷風台本、菅原明朗作曲。昭和13年に上演されたままのものを、上演した。飯村孝夫構成演出。
今の時代が失ってしまったものが、確かにここにある。
昭和13年がどういう時代であったか、背景の知識がないと、この歌劇の意義や意味が若干薄れるかもしれない。昭和11年に「2.26事件」が起こり、世相は一気に軍国主義に傾いていた。
そんな世相のなかで、「奇人・変人」永井荷風はあえて時代の流れに抵抗するように、大学生とバスガールの恋愛劇を書いた。
正味45分の短いものである。昭和13年、浅草で上演されたときは、この作にレビューと笑劇が加わったもののようだ。時間の制約があったのだろう、あと15分あったら、後半のクライマックスが盛り上がったのでは……と思ってしまう。
しかし、とにかく、初演当時のものをそのまま上演することに意義がある。
公演は16日と17日の二日間。ぼくには、赤い着物姿の「お梅さん」が印象に残った。
いずれにしても、組織も資金もないところで、この種のイベントを催すことの大変さを改めて思う。飯村氏をはじめ、編曲の如安さん、美術の山本淑子さんほか、知り合いの「手作り」の歌劇なので、舞台裏もよくわかる。
終わって、見に来た脚本家の冨川元史氏も含めて関係者と軽く飲食。今のテレビドラマ、芝居についての異論反論などいろいろな話がでて、これはこれで面白かった。