コラム


by katorishu
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フリー受難の時代

 4月22日(金)
 タレントのポール・牧さんが自殺した。直接の面識はなかったが、昔、ぼくの書いたドラマに出演したこともある。原因は不明だが、仕事が減っていることを嘆いていたともいう。
 コメディアンの中には表面の明るさとは違って、案外、生真面目で思い詰めるタイプの人もいる。関西系のお笑い芸人ばかりが隆盛で、東京の芸人には日の当たらないという事情も影響しているのだろう。いずれにしても傷ましいことである。
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 14時から16時半まで、六本木のハラビルで、日本放送作家協会の理事会。月一回開かれる理事会で、「社団法人」の形をとっているが、どこぞの天下り官僚が高給をはんでいる公益法人や社団法人とちがって、理事全員がボランティアである。
 ちょっとショッキングなことを知った。放送作家協会員で81歳になるガンをわずらっている某女性が、月1000円の会費を払えないとのこと。なんでも一人暮らしで、月4万5000円で生活しているという。恐らく国民年金だけで食べているのだろう。

 結構な退職金や厚生年金、共済年金などで手厚い保護をうけている公務員や大企業のサラリーマンとちがって、フリーの職業の人達はなんの保証もない。
 一部の著名人が高収入があり、それがマスコミ等で喧伝されるので、放送作家など結構、高給をとって優雅な暮らしをしている……と見られがちだが、およそ1000人いる会員のなかで、平均的サラリーマンの年収があるのは、3分の1にも満たないのではないか。
 高齢化が進む一方で、放送界の現場は比較的、若い人が仕切っており、年配者にはなかなか仕事がまわってこないので、貧窮故の会費未払いも増えている。
 じっさい、放送作家で経済的に追いつめられている人は多い。夜逃げする人や自殺者も多く、かなり悲惨な状況になっている。「明日は我が身だねえ」などとささやきあった。

 放送作家に限らず、フリーランスで仕事をしている人は、常に生活の不安にさらされている。若者文化全盛で、文化や芸術方面にお金を使うのは若者ばかりで、中高年は本は図書館で読み、映画館や芝居などにもあまりいかない。勢い中高年の「創作者」の活動する場がどんどん狭められていっている。
 クラシック関係の音楽家なども同様で、表向き優雅そうに振る舞っていても、内情は四苦八苦の人も多いのではないか。物書きとて同じである。
 物や食べ物、旅行などには平気で大金を払うのに、文化や芸術にはなかなかお金を出さない国民である。
 日本文化も崩壊の瀬戸際にきているようだ。
by katorishu | 2005-04-23 01:56