コラム


by katorishu
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届く言葉 10

 4月、27日(水)。
★届く言葉10
「ネット上で発言していると、不特定多数の人たちに向けて書いているせいなのか、つい公正であろうとしてしまう。自由なはずの自分のホームページなのに(それに稿料がもらえるわけでもないのに)なぜか、自分自身を縛ってしまう。
『善悪の彼岸へ』を文芸誌に連載しているとき、このような危険ことは文芸誌だからこそ書けるのだと感じていた。ほかのメディアでは絶対に書けないことを、あえて書くことができた。ホームページは自由なようでいて、なぜかそれができない。そして不本意なまま、つい「啓蒙的」で「モラリスト」ふうの文章ばかり書いてしまう。そのことに、いたたまれない自己嫌悪を感じるようになった。
 小説家の言葉は決してきれいごとではなく、本来もっと荒々しく、危険なものであるはずだ。愛憎もある。毒もある。澄んだ言葉も、暗く沈んだ言葉もある。それは社会的な発言においても同質であるはずだ。だがホームページでは、なぜか退屈なモラリストになってしまいがちだ。どこか欺瞞的で、自己嫌悪ばかりつのってくる。どうしてだろう? まったく困ったものだ。」
    (「海亀日記」・作家・宮内勝典のホームページ上の日記より)
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 同じようなことを、ぼくも考えていたので、少々、考えこんでしまった。宮内氏の小説は外国を舞台にしたものが多く、現代日本文学の中で特異な位置をしめていて、熱烈なファンも多い。
 去年まで早稲田の二文で非常勤講師として文学を教えていて、ぼくもほぼ同じ時間にシナリオ演習を担当していたので、教員控え室で何度か顔を会わせることがあった。
 熱っぽく文学の意味を語っていたとのことで、学生の評判も実によかった。
by katorishu | 2005-04-28 06:08