届く言葉16
2005年 05月 09日
★届く言葉16
「願い事があればあるほど、本当に手に入れたいものはどんどん遠退いてゆくんです。今、目の前にあって、手を伸ばせば触れるものさえ大切にすれば、僕は……いや、僕だけじゃなくて人間は、明日を生きていけるような気がします」
『青い鳥』 野沢尚脚本豊川悦司、扮する柴田理森の台詞。
野沢尚氏はシナリオも小説も書く才気ある人で、ぼくの同業者だったが、去年の夏、自殺してしまった。ぼくは個人的に面識はないが、よく彼の話は聞いていた。
野沢氏が自殺した当時、脚本作りに関わっていた放送局の演出家は、ぼくの友人でもあるので、彼から経緯を聞いた。
「大作」の脚本の執筆がうまくいかなかったようで、それも彼を追いつめていたようだ。
現在、テレビドラマの脚本家は、局側から「いいなり」になる脚本家と「闘う」脚本家とふたつに別れ、もちろん「いいなり」派が圧倒的に多いとのことだが、野沢氏は数少ない「闘う」派の人だった。
「闘う」派の「作家性」のある脚本家は、若いプロデューサーなどから煙たがれ、仕事の発注も減っていくというのが、悲しくも情けない現実である。かくて、毎日放送される多くのテレビドラマは、ご覧の通り……。