コラム


by katorishu
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 樋口一葉作品の朗読会

 5月17日(火)
 乃木坂にある「シアターバー・コレド」に田中泰子の朗読会を聞きにいく。樋口一葉の「一三夜」でチェロ演奏と朗読の夕べ。じつは彼女をコレドに紹介したのはぼくなので、行くことになった。
 彼女はすでに太宰治や向田邦子などの作品を朗読しているが、単独では初めてとのこと。僕自身、彼女の朗読を聞くのは初めてだった。
 樋口一葉作品の朗読会_b0028235_1471828.jpg客席50が満席。着物姿の彼女が登場して、静かに語り始める。間合いのとり方もよく、思っていたより、よかった。ただ、一葉の作品は文語体なので、この意味は何であったかな……とふと思ったりして、内容に入っていくのに少々時間がかかるところもあった。
 今度は、現代物の朗読を聞きたいものだ。
 終わってその場が「飲み屋」に変身するところが「コレド」のよいところ。知り合いの役者や初対面の中高年の人が同じテーブルであったので、歓談した。
 70歳に近い某氏はリタイヤーして10年近くなるが、充実しているという。非常に若々しくみえる。プルーストをフランス語で読んでいるとか。その他、よく文学書を読んでおり、映画や演劇もよく見ている。こういう人とは「共通の地盤」があるので、一頃はやった「アンチロマン」の話やドストエフスキー、小津安二郎や成瀬巳喜男の作品から、最近の是枝監督の「誰もしらない」などまで、話が弾む。
 文化の担い手として、この類の人が団塊の世代を中心に増えてくれば、日本文化もあるいは活況を呈するようになるかもしれない、と思った。
 最近はすぐ「自分が出たがり」「光をあびたがる」傾向が強いが、文化には担い手が重要である。担い手として、そのジャンルに深くかかわり、伝統を踏まえて、その地盤に花を咲かせる。つまり、いい花を咲かせるには、「自己研鑽」という時間がかかるのである。
 それを省いて、いきなり花を咲かせようとするから、安っぽい花にしかならない。
 早く育つ木は、早く枯れるものである。

 ところで「コレド」は地下鉄乃木坂駅のすぐ近く。乃木神社の正面にあるビルの地下にある、落ち着いた雰囲気のバー・シアターだ。「女性が一人でも気軽に入れる店」とのことで、経営は元シナリオライターの桃井章氏。 
 ときどき、小さな舞台や音楽会などもやっています。ぜひ、一度足を運んでみてください。
 ホームページのURLは
http://www.tc-coredo.join-us.jp/
by katorishu | 2005-05-18 14:16