コラム


by katorishu
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訃報が相次ぐ。映画評論家松島利行氏逝く。

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2018-05-16
季節の変わり目なのか、最近、知り合いの訃報が多い。今日は映画評論家の松島利行氏の葬儀。避けられない仕事があり参加できないが、松島さんは僕が大学に入ったときの四年生。「外語大ペンクラブ」という文学サークルがあって「外語文化」という雑誌を出していて、松島さんはそこで小粋な論を展開していた。確か「僕の周りは父も叔父も皆んな東大卒で僕だけ落ちこぼれて2期校の外語大に来てしまった」と自身を揶揄していて、そこはあまり良い印象ではなかったが。

上級生に何人か論客がいた。僕の記憶では、毎日新聞の映画記者になった松島さんと、新藤兼人さんが主催する近代映画協会に行ったMさんの2人が印象に残る。巣鴨の喫茶店で2時間あまり、松島さんら先輩が僕の知らないイタリアやフランスの作家や映画監督について縦横に語るあいだ、僕は一言も口を挟めなかった。
読書量も少なく基礎教養が足りなかったので、これじゃダメだと思った。

松島さんに再会したのは、それから20年ほどして新宿のゴールデン街の行きつけのスナックでだった。当時僕はTVドラマを「量産」しており、若いこともあってゴールデン街に良く通った。そこで松島さんと再会して何を話したか記憶にない。
最後にお会いしたのは、松島さんが毎日新聞を定年退職して間もなく、墨田区の住まいの近くに良い飲み屋があるので来ないかとのこと。カミさんと一緒に行った。松島さんは酒癖が良い方ではなく、出したばかりの拙作「今村昌平伝説」について、途中から「あれは良くない」とけなし始め、気まずい空気になった。そのあと松島さん宅に行った。比較的若い女性がいて、連れ合いであると紹介された。

その後FBで松島さんはかなり頻繁に発言されていたので、何度も会っている気がしたが、考えてみると、あれが最後になってしまった。電話では何度か話したが。

世は無常。松島さんの著作では「日活ロマンポルノ史」を高く評価したい。「モダンな東京少年」が、そのまま大人になってしまったようなユニークな先輩だった。御冥福をお祈りします。

by katorishu | 2018-05-16 10:41