市民劇団、劇団かに座
2005年 06月 01日
横浜駅の近くにある劇団かに座の稽古場に行く。拙作「メアリーという名の姉」を、6月24,25,26日、横浜の「かなっくホール」で上演することになっており、そのための稽古。
市民劇場なので、団員は昼間、仕事をもっており、ウイークデイの「稽古は夜になってから始まる。
稽古場は代表の田辺晴通さんの自宅の裏にある。今回で90回目の公演であるという。それだけ続いたこと自体がすごい。これまでの公演は井上ひさし氏や別役実氏など著名劇作家の作品が多い。長く続いた理由として、自前の稽古場があることと、田辺さんという奇特な人の情熱のおかげだろう。地元横浜市の文化担当の職員や地元の新聞社の人も見学にきていた。
3年前、ぼくの作演出で銀座みゆき館劇場でやったときは、全員、プロの役者であったが、今回はいずれもアマチュアだ。芝居の経験のある人もいるとのことであったが、ほとんどは、かに座にはいってから芝居の経験を積んできた。
裏方などもやりながら、じっくりと積み上げてきた成果を、大勢の前で披露する。プロのようなわけにはいかないものの、アマチュアならではの良さを感じた。サラリーマン、牛乳屋、測量会社員、元看護士、福祉関連の人、主婦、アルバイトほか、昼間様々な職をこなして夜、稽古にやってくる。衣装も、セットも、チラシなどもみんな手作りでやっている。
時間をかけて、作り上げる良さが、舞台にも反映されるはずである。
横浜は演劇が盛んなところかと思っていたら、横浜市の職員の話では、「東京に見にいってしまうので、演劇はもうひとつなんですよ。音楽は盛んなのですが。演劇を盛り上げていきたいですね」とのこと。それだけに、田辺氏ひきいる「かに座」の存在は光るのではないか。
終わって、稽古場で軽く飲み会。仕事をしながら、演劇に情熱を注ぐ人たちの熱い気持ちを、聞いた。お互い助け合いながら、ボランティア精神で一つの目標に向かって努力していくプロセスが貴重だと思った。
まだ稽古不足で芝居のリズムが足りないし、間の悪いところが随所にあるものの、ひとつの確乎とした舞台空間を作り上げていくのでは……と、本番での「成長ぶり」が楽しみである。