コラム


by katorishu
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終戦記念日の自戒

 8月15日(月)
■60回目の終戦記念日。下北沢の駅前劇場で、正午を迎えた。この時間にはじまる芝居に知り合いの根本和史氏が出ているので見にいったのだが、12時開始とは早い、と思っていたところ、終戦記念日なので黙祷をするためにその時間の開演となったとのこと。ほぼ満席の御客が立ち上がって黙祷した。
 舞台は満州を舞台に戦後、置き去りにされた日本人女性のその後の生き方を描いた作品。素材は面白いのだが、脚本構成にやや難があり、主人公の女性の悲しさ辛さが胸に迫ってこなかった。
 終わってカ劇場の前のコーヒー店でミサンと女優の松岡みどり氏と雑談。あとから役者の根本和史氏。何かを創り出そう、表現しようとしている人達との会話は刺激があって快い。

■夕方からNHKで長時間放送された、アジア諸国との共生や歴史認識などをテーマにした生番組を見た。間にニュースなどをはさみながら、5時間近くにわたる読者参加の討論番組。
 受信料の不払いが効いたのか、最近のNHKの番組にやや変化が見られるようだ。あまりテレビを見ないので、はっきりしたことはいえないが。
 ゲストとして討論に参加した中では、元三井物産社員の寺島氏の論に共感を覚えた。基本的な考え方に違いはあるにしても、「右派」論客といわれている櫻井よしこ氏の「筋の通し方」はなかなかのものだと思った。

 戦後60年。まがりなりにも日本は平和を保ってきた。冷戦構造のなか、日本は多分に漁夫の利をしめてきた趣が強いが、今後の10年、20年でどうなっていくのか、見通しは暗い。
 少子高齢化、過剰な財政赤字……等々、 あまりにも難問が山積しており、いずれも簡単に解決できない問題であり、深刻である。

 社会のシステムを根本的にあらためない限り、問題は解決しないし、現在の物的「繁栄」など昔話になってしまうだろう。しかし、多くの国民は現行のシステムにどっぷりつかって、それなりの安逸をむさぼっているので、改革はあまり進まない。

 一口に改革といっても様々なやり方がある。小泉政権がやろうとしている「改革」を断行すれば、一握りの層に富が偏在することになり、社会のもっとも弱い層の血が多くながれるにちがいない。
  予測としては、結局は「弱肉強食」の論理で「自然淘汰」がすすみ、「弱者」切り捨てになっていくだろう。 ぼくも含めて大半の国民にとって「いやな時代」になる公算が強い。戦争によって問題を一気に解決させようという勢力が台頭するかもしれない。

 「いやな時代」にさせないために、何ができるか、何をしなければならないか。残された「持ち時間」の中で、真剣に考えていきたい。そして、微力ではあっても考えを実行にうつす。物書きとしての「実行」とは、作品として結実させることである。

 テレビや出版社など「既存のマスコミ」では、ぼくの本当に書きたい素材、テーマなどが残念ながら企画としてなかなか通らない。稀に例外があるにせよ、大マスコミの関心は「数字」ばかりである。「数字(売り上げ)」がとれる(伸びる)とれないかが、唯一の判断基準にますますなりつつある。
 「いやな時代」だなと思っていたところ、幸い「インターネット」というメディアが現れた。インターネットの良いところは、資金のない個人が知恵をめぐらせば、起業できるし情報を世界に広く発信できることだ。

 今後、一層、この新しいメディアを志しを同じくする者同士で活用すると共に、人間の五感に訴える「ライブ」での活動を増やし、芝居、講演、ミュージカルなどに関わっていきたい。
 幸い、この方面の人達とのネットワークがひろがりつつある。それと、「これから」という志をもつ「若い人」との交流を深めたい。物理的な年齢ではなく、精神が若く柔軟な思考ができチャレンジ精神に富んでいる「若い人」である。
 60回目の終戦記念日に改めて自戒したことだった。
by katorishu | 2005-08-16 01:23