映画「真夜中のピアニスト」の魅力
2005年 10月 15日
某制作会社のプロデューサーと渋谷で午後1時からドラマの企画の打ち合わせ。楽天がTBSの株を買い占めた問題が話題になる。テレビも激変期にあるようで、2011年に控えているデジタル化を前に、テレビと通信の融合は進むだろう。作り手にとっては良い状況がくるのか、こないのか。率直にいろいろ「個人的意見」をかわしたが、ここには記せない。
渋谷図書館にいき、昭和43年1月から3月までの朝日新聞の縮刷版から100数十枚をコピー。文字が小さいので、読むのに苦労する。天眼鏡をもってくればよかった。
当時、「非武装中立」を唱えていた党が現在、与党になったりと……今と昔を比べると、いろいろと面白い。仕事の必要があって縮刷版を検証しているのだが、他の記事に思わず目がいってしまう。
3時間ほどで眼精疲労が強くなり、続けられない。他に書くべき原稿等々、やることがいろいろとあるのだが、こういうときは気分転換に映画を見るのがいい。渋谷に買い物に出たカミサンとロフトで落ち合い、宮下公園の近くに近年できたシネマコンプレックスのアミューズCQNでフランス映画「真夜中のピアニスト」(ジャック・オディアール監督)を見る。
ピアニスト志望であった青年トムは、暴力で住民を追い出したりする「悪徳不動産屋」の社員で、日常的にかなり危ない仕事をしている。が、死んだピアニストの母親を慕っているところがあり、母のマネージャーであった人に刺激され汚れた不動産業の傍らピアニストを目指す。
北京からやってきた中国人女性ピアニストにピアノを習ったりしてオーディションを受けるのだが……。
飲んだくれの父親との親子の関係をからめて、時に暴力的シーンをまじえたんたんと展開していく。 主演の青年を演ずるロマン・デュリスが実に自然でいい演技をしていた。孤独感とはにかみを、自然に表現していた。てらいと含羞を秘めた表情が秀逸。往年のジェームス・ディーンなどを彷彿させる。
ハンディカメラの揺れるカットと、絶妙のタイミングで挿入される音楽もよかった。ハリウッド的な「引っ張り」はなく、淡々と青年の日常を描写していくのだが、見るものを引きずり込む。ぼくにとっては近頃出色の映画だった。
少々疲れているとき映画を見るのはいい。そういえば、勤めているとき、夜勤明けの朝、よく映画を見たものだ。
盛り場にしては落ち着きのあったあの当時と比べると、若者文化偏重の今の渋谷はまるで別の都会だが。