忘れてはいけないロシアのプレゼンス
2005年 11月 22日
21日、日ロ首脳会談が行われたが、日本にとって懸案の「北方領土」について、進展はなかったという。日本側が北方四島の帰属確認後に平和条約を結ぶとした「東京宣言」(1993年)の再確認を求めたのに対し、プーチン大統領は宣言に言及しなかった。
共同声明の発表もなく、経済分野を中心に12の合意文書が署名されたものの、経済協力でも見るべき進展がなかった。
小泉外交は日中、日韓でも手詰まりで、完全に落第点である。
北方領土の返還問題については、ソ連崩壊後の混乱の中であえいでいたエリツィン大統領のときこそチャンスであったのだが、当時の日本政府が全力をあげてこの問題に取り組んだかどうか。
バブル絶頂期で日本は「金余り」状態が続いており、北方領土を「買ってしまえばいい」という議論も展開されていた。
「買っても」なんでもいいから、国の総力をあげて返還をもとめるべきだった。
当時のロシアの経済困難は深刻で西側諸国にSOSを発していた。なのに、おごりたかぶった日本は、これに真剣に対処しなかった。有効な外交カードが、今よりずっとあったはずなのに。
プーチン政権になってから「偉大なロシア」の復活を目指す勢力が台頭してきており、一段と北方領土4島の日本への返還はむずかしくなっている。
外交はきれいごとでいくものではない。いろいろなカードを出し合いながら、脅したりすかしたりの複雑微妙なかけひきである。
外務省もマスコミも、鈴木宗男議員や佐藤優外務省職員を「切り捨てて」しまったが、ああいう「裏技の持ち主」の力もフル利用しなければ、領土など返ってくるものではない。
「善意」や「期待値」に依存する個人の交渉とは別なのである。
プーチン政権下、ロシアは豊富な天然資源をバックに経済力をつけてきており、すでに日本などアテにしなくてもやっていける。
日本はチャンスを逃したな、と小泉・プーチン会談の結果をニュースで見ながら思った。
日本が将来的にもっとも重視しなければならないのは、「天然資源」である。未開発の天然資源が豊富に埋蔵されている国といったら、ロシアであり、シベリアである。
アメリカべったりもいいが、日本はロシアこそ最重要国として対していかなければならないのに、政府はもちろん、ほとんどの国民も、ロシアへの関心が低すぎる。
数々の問題をかかえているとはいえ、今後、中国とともにますますロシアのプレゼンスが増していくだろう。なにの、多くの国民にとって、ロシアなど地上に「存在しない」かのようだ。
じょじょに力をつけてきている隣国ロシアが、アメリカ、中国に対抗する「大国」として復活するのは時間の問題だろう。そのときに慌てて対処を考えるのでは遅すぎる。
火がすぐ目の前にまで迫ってこないと、気がつかないのですね、島国日本の官民は。