コラム


by katorishu
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心に余裕のない人も増えている

 11月26日(土)
 品川図書館で5時間ほど執筆作業。これもパソコンコーナーが出来たおかげである。机の前にコンセントがついているので、バッテリーがなくてもよく、第一画面が明るい。資料も豊富にあるし、品川に引っ越してよかったことのひとつだ。

 他の図書館でも、最近はパソコンを使用できるコーナーが少しはできているが、コンセントまでついている所は、ここ以外に知らない。徒歩10分、旧東海道を歩いていけるので、散歩にもなり、ぼくにはありがたい施設だ。

 図書館には常連がかなりいるようだ。本を読む常連は少なく、多くはビデオを見る人たちである。品川図書館にはビデオを見られる装置が6台ほど並んでおり、いつも満席である。
 若い人もいるが、圧倒的多数はシルバー世代だ。ウイークデーの昼間からきている人もいて、中には「失業者かな」と思える人もいる。

 ぼくなども「萬年失業者」といえばいえるので、そう思われているかもしれない。本日、そのビデオ視聴コーナーから音声が漏れ聞こえてきて、うるさかった。そのうち、閉館近く、ビデオを見ていた初老のオッサンが突然、図書館員を「お前、ちょっとこい」とよんで怒鳴りはじめた。
 読書などをしていた人が一斉に聞き耳をたてていた。
 どうやら、そのオッサンが両耳につけていたヘッドホンから音声が漏れていたようだ。職員が漏れていることを注意したことに、そのオッサンは切れてしまった。
「悪いのは俺じゃねえ。こんな壊れたヘッドホンを貸したお前たちが悪い」といった意味のことをオッサンは大きな声で怒りをこめていっていた。

 わかい職員がひたすら低姿勢にでて謝ったので、オッサンは帰っていったが、「余裕がなくなっているな」とぼくは思ったことだった。
 図書館にはホームレスの姿も目立つ。ときおり館内の案内スピーカーから「席を離れるときは持ち物をもっていってください」とアナウンスされる。ビデオ視聴コーナーには、一見してそれらしい人もいた。
 さきほどのオッサンは、着ているものがみすぼらしく無精髭もはやしており、もしかしてホームレスであると思われたことで、反発したのではないか。

 ホームレスの人はビデオを見ながら大抵眠っている。傍らに大きな荷物があるので、だいたいわかる。もっとも、ぼくも資料などでふくらんだバッグをもっているので、パソコンを前に出していなかったら、ホームレスと見られるかもしれない。(そんなことはないか)
 
 今は若者がキレルとかで、異常な犯罪も報告されているが、今後、団塊の世代を中心したシルバー世代の犯罪などが増えるのではないか。定年退職を迎え、閑でなにをやっていいかわからない。そんなシルバー層が急増したときが危ない。
 
 人は失うのに惜しい財産なり、係累なり、地位や名誉などがあり、生き甲斐をもっていれば、あまりへんなことに走らないものだ。走ろうとしてもブレーキがかかる。  
 が、孤独になり、社会から疎外されていると感じるようになると、刹那的、虚無的になる。
それが内攻すれば「自殺」に向かい、外に向かうと暴発したり、犯罪に走ったりする。

ほとんどの人間は心にブレーキをもっており、社会の常識という規範を自分の課しているので、胸の中では思っても、実施に移さないものだ。が、何百人、何千人かに一人は、そんなブレーキが壊れてしまっている。そんな人が刹那的、虚無的になれば、容易にアンモラルな行為に走りかねない。
 図書館にやってくるシルバーは、何か生き甲斐を求めているのだろうが、なかには、いつも口の中でぶつぶついって落ち着かない人もいる。本日もそんな常連の一人がビデオを見ていたが、画面は真っ黒いままで何も映っていなかった。なのに、そのひとはヘッドホンをつけ、何も映っていない画面に見入っていた。ちょっと怖い風景だった。
by katorishu | 2005-11-27 00:22