コラム


by katorishu
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下請けの惨状

12月20日(火) 
 午後2時、起床。だんだん生活時間がずれていく。健康にはよくないのだが、朝方まで起きているので結果としてこうなってしまう。
 食事をして外に出ると、もう日がかげっている。冬の日は早いので、数時間で暗くなる。喫茶店を二軒まわり、4時間半ほど執筆して帰宅。

 ウエッブのニュースに日本のトヨタがGMを抜く、といった記事が出ていた。日産自動車もカルロス・ゴーン氏がやってきて「大改革」をやり、黒字に転じ、繁栄を謳歌しているようだが、その影で「泣いている」多くの下請け、孫請け業者がいることを、忘れてはいけないだろう。

 たまたま親類に、日産の下請けの、また下請けをやっている零細企業者がいる。車のシートをつくっているのだが、とにかく「単価の切りつめ」ばかりをいわれ、利益が出ないと嘆いていた。
 下請けのコストを生存ぎりぎりまで削って「生かさぬよう殺さぬよう」にしておいて、本体は繁栄を謳歌する。苛斂誅求に泣いた江戸時代の農民と領主の関係を思い描いてしまう。
 「いつかゴーンさんが下請けの集まりにきたことがあて、下請けの一人が、あんたのおかげでみんな青息吐息で泣いている。一人だけ、いい格好するな」と日本語でいったそうだ。ゴーン氏は苦い顔をして黙っていたという。親戚の下請け業者から聞いた。
 この構図はテレビ番組制作の現場にも、そっくりあてはまる。

 「国際競争力に勝つ」ためという大義名分で、下請けの犠牲の上に成り立つ繁栄。本社の社員と下請け、孫請けの社員とでは、給料なども大変な差が出ている。
 コストカットを下請けに要請する構図は、例の耐震設計偽造問題と根はおなじである。「いやなら、他に会社はあるんだから」という脅し文句。
 
「村社会日本」も嫌いだが、こういう「儲かりさえば」という構図も嫌である。「他を排除する」日本型村社会と、弱肉強食のグローバリゼーション。この中間の、「節度ある」経済システムというものは築けないものなのか。
ぼくは金勘定にうとい「文弱の徒」なので、素人考えと一蹴されてしまうかもしれないが、このまま貧富の差が開いてしまうことを、強く懸念している。差が開いてそれが、世襲などで固定化してしまうと、社会から活力が失われ、一方、ルサンチマンを抱く人間が増え、社会は極めて不安定になる。

この数年が勝負時であるという気がする。一部の「強者」に都合のよいシステムが「合法的」に出来て「完成」してしまうと、これを崩すのは容易ではない。今、国民の目の届かないところで、着々と「強者」に有利なシステムが出来つつある。
ぼくにいわせれば、国民の圧倒的多数派は、ぼくも含めて「弱者」なのだが、「弱者」のくせに、「強者」と思いこむか、思いこみたい人もかなりいて、彼等は「強者」の「お仲間いり」をしようと、忠犬のように強者に尻尾を振っている。
 その点、猫はあまり尻尾をふらず、「単独者」の趣があって、ぼくなど猫のほうが好きである。「犬族」が多い世の中で「猫族」がもっと増えて欲しい。猫族だからといって、夜起きて昼間寝ているわけでもないのだが。
 朝にならないと、なかなか眠れないのは、一種の宿痾ですね。
by katorishu | 2005-12-20 21:00