コラム


by katorishu
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オレオレ脳の悲劇

 2月7日(火)
 脳を限界まで酷使してみたい気持ちがある。本日、品川図書館で5時間ほど喫茶店で2時間ほど計7時間、ほとんど休まずに執筆作業に没頭した。没頭すると時間の経過に気づかない。
 脳はかなり疲れているはずだが、同時に脳は偉大であると思う。(別にぼくの脳のことをいっているのではなく、人間一般の脳のことです)
 一人の人間の脳には何百億個の脳細胞があるそうだが、これがスーパーコンピューターのように働き、記憶その他の機能を司っている。
 言語を通して世代を超えて伝承される記憶もふくめ、個人の人生行路で貯めた記憶こそ、その人間の個性を形作るものである。
 記憶の根っ子には、脳がまだやわらかい幼少期に創られた記憶装置があるのだろう。周囲にあふれる膨大な情報から何を選び何を自動的に捨てて、記憶にためこんでいくか。記憶保存のメカニズムがうまく働けば、試行錯誤の果てに「まとも」な個性が形作られる。

 不幸にして、このメカニズムがうまく働かず、ある部分だけが突出してしまう脳というものがあるようだ。
 「週刊ポスト」06,2,17号にホリエモンと面談した脳科学者の話が載っていた。ブレインサイエンス・ラボラトリー所長の塩田久嗣氏で、2年前、ホリエモンと面談した結果、彼は「オレオレ脳」の最たるものだという。
 塩田氏は人の脳を①「オレオレ脳」(主体優位型)、②「ウルルン脳(感性優位型)」。③「ハイハイ脳(協調優位型)」、④「キチント脳(理屈優位型)」、⑤「キョロキョロ脳(好奇心旺盛型)」、⑥「コツコツ脳(徹底集中型)」の6つにわけている。
 過去数千人に面接して導きだしたものとのこと。

「オレオレ脳」は政治家や起業家に多いとのことだが、ホリエモンは中でも過去に類を見ない「超オレオレ脳」の持ち主であるという。この脳の特徴として、まわりを見下し断定口調であると氏はいう。このタイプは精神を興奮させる神経伝達物資、ノルアドレナリンが脳全体に分泌されやすく、動物が本能的もっている攻撃性が競争心として強く出るということだ。

 このタイプの人間は負けん気が強いので、競争の中に身を置くと充実を感じる。ところが負けたくないので、負けそうになると、自分に有利なルールをつくって、そこで優位に立とうとする。とにかく勝つことにこだわり、勝つことこそが生き甲斐で、それ以外の人生は意味がないと感じてしまう。

 なにやら淋しくも、さもしい人間だと思えてしまう。勝ち負けなどスポーツ以外ではどうでもいいのではないか。
 策略をもちい合法・非合法の隙間をついて他人から金銭をすいあげ、勝ったと思っている人間。幸か不幸か、ぼくの周囲にはほとんどいないが、その類の人間が幸せであるとはとても思えない。
 確かに、われわれの周囲には勝ち負けに異常にこだわる人がいる。
 その類の人は脳がすこしおかしくなっているのではないか。往々にして独裁者のタイプにその類が多い。権力を得るためには、理不尽なことでも裏切りでもなんでもやるという徹底したマキャベリストのほうが、確かに金持ちや権力者になる確率が高い。
 逆はまた真ならずだと思うが、ぼくはどうも根っから必要以上に金持ちや権力者が好きではない。
 別に小泉総理がのたまっているように「嫉妬している」わけではないのです。ただ、哀れんでいるだけです。
 彼等には、多分、真の友はいない。疑心暗鬼ばかりだろう。なぜって、「栄達」に至る過程で多くの友や恩人を裏切り、常に寝首をかかれるのではと疑心暗鬼になっているはずだから。
 その最たる人間が、大粛正を行ったスターリンと毛沢東である。

 欲はほどほどに、足るを知り節度を守り、家族や友、隣人と仲良く……これが伝統的日本人のあるべき姿であった。ところが、バブル経済とその崩壊のころから、その類の人間が「過去」のものになりつつある。こういう「過去」を「今」に蘇らさないと、いよいよ日本は危なくなる。
 
by katorishu | 2006-02-08 01:16