『10年後の日本』の衝撃
2006年 02月 09日
拾い読みだが恐ろしい本を読んだ。『10年後の日本』(文春新書)で、年金崩壊から学力衰退まで47項目にわたって「10年後の日本」を予測している。『日本の論点』編集部編となっている。具体的データの裏付けがあるので、怖さに実感がある。
いろいろな論点があるが、そのひとつとして、「団塊の世代」の定年をきっかけに、今後700万人もが「無職老人」になると指摘している。一方で、フリーターは500万人になる。大量の人間がリタイヤすることでGDPが16兆円減り、消費は衰え経済は停滞する。
団塊の世代は退職金も規定通りもらえ、厚生年金や企業年金もあるし運良く「逃げ切れる」と思っているのかもしれないが、退職金も企業年金も予想通りもらえる保証はないようだ。彼等とてまだ20年、30年生きるので、その間に「逃げ切れた」と思っている「比較的恵まれた」層も、地獄を見ることになる。
経済面で何より怖いのはハイパーインフレである。
現在、国債は返済のあてもなく累増をつづけている。これまで国債は比較的順調に消化され長期金利は1パーセント台で推移してきた。
これは国民がまだ日本政府を信じているからで、なんといっても「世界第二の経済大国」なのだから、心配ないというエコノミストもいる。確かに国有財産は102兆円で個人の金融資産の総計が1400兆円あるという。数年単位で考えれば「まだもつ」かもしれない。しかし、仮に長期金利が5パーセントとなると、税収のすべてが国債の利払いに消えてしまう。
つまり、政策が無になってしまうのである。財政の裏付けがない政策など、紙に描いた絵にすぎない。
すでに日本の国債に対する海外の格付けは低下しており、さらに赤字が増え続ければ、海外で信用を失う。現在、世界でも例を見ない低金利等の「非常手段」によって、日本はかろうじて延命しているといってもよいくらいだ。
このままの政策が続けば、いずれ財政は破綻し、市場は暴走、一気にハイパーインフレに突き進む。
戦前の1932年、日本の物価は350倍にまで高騰した。経済の惨状を一挙に解決しようと、日本は中国満州に侵出した。当時、もっとも危機意識をもっていたのは軍部であった。
「短絡的思考」であり「愚か」と、あとからはいえるが、マスコミはもちろん多くの国民が軍部に喝采したことも忘れてはいけないだろう。満州への進出がアメリカ、イギリスの権益とつぶかった。彼等は対抗策として日本を一種の「経済封鎖」に追い込んだ。追いつめられた日本は、「座して死をまつよりは、つっこもう」という特攻精神でパールハーバーを奇襲した。
簡略化して記せば、そういうことである。結果は、悲惨そのもので、数百万人が死んだ。
今、危機打開のため、似たようなことが起こらないという保証はない。人は窮すれば何でもやるのである。
ハイパーインフレになれば、経済は機能麻痺し、倒産、失業が激増するだろう。年金生活者の生活がまず破綻する。預金など、ハイパーインフレになれば、紙くず同然である。モラルは荒廃し、犯罪は増え、日本はアルゼンチン並みの国になるだろう。(比較してはアルゼンチンに申し訳ないか。経済大国であっただけ、谷も深く厳しい)
その他、この本には環境破壊や天然資源の枯渇等々、恐ろしい未来が記されている。
すでに全地球規模の食糧危機も迫ってきている。中国の現体制も、あと10年ともたない。日本人の現在着ている衣類の70パーセントは中国製である。安いからといって、喜んではいられない。中国の体制崩壊は、日本にも大変な衝撃波となって襲ってくるに違いない。
イスラム文明とキリスト教文明の対立も、いっこうにおさまらないし、どうも激しくなる一方だ。地上の人口の5人に1人が中国人で、4人に1人がイスラム教徒であることを思うと、彼等との対立がもたらす惨禍ははかりしれない。
『10年後の日本』は去年の末発売され版を重ねているので、関心のある方はぜひ読んでください。
現代人が、とてつもない「危機」の前にいるのだということ、危機を回避するため、出来るだけ早く手をうつ、それも根本的な「システム」の改革をしなければいけないこと等々が、実感として迫ってくるはずです。
残り時間が少ない人はともかく、これから40年、50年と生きる予定の人は、「危機」の実相を知っておいたほうがいい。そうして危機をなるべく遅らせるためには、どうしたらいいか、深く考えるとともに、そんな危機回避を真剣に考えている政治家を選ぶようにしないといけない。
過去の議員の中では、この危機を強く訴えていた人も少数ながらいた。みどりの党の「紋次郎」こと中村敦夫氏もその一人であったが、先の参議院選挙で落選してしまった。
「小泉マジック」の煽りをくったことは間違いない。
氏の著書「さらば、欲望の国」(新書版) -欲望の大国から環境立国へ-(近代文芸社)に、氏の思いのたけが綴られている。べつに氏がぼくの大学の先輩だからほめるわけではない。一度、彼の講演を聞いたことがあるが、しっかりとした政治哲学をもっていた。「小泉チルドレン」たちの幼稚さとは、天と地も違うのだが、選挙民は「情緒的に動き」アホな連中に投票してしまう。
もう一人、政官財の不正を追及しようとした民主党の石井紘基議員も、注目すべき人であったのだが、不幸にも自宅前でバカ者によって刺殺されてしまった。4,5年前の出来事だから記憶に残っている人も多いに違いない。
殺害の背後に「闇の勢力や彼等に影響を与えて人がいる」と夫人のナターシャさんから、ぼくは直接聞いた。(親しいとはいえないが、以前からの知り合いです)
じつは彼女は法廷で異例の遺族による陳述を行ったが、日本語があまり得意ではないというので、共通の知人を通じてぼくに案文を書いて欲しいという依頼がきた。お金がないのでボランティアでということだったが、意気に感じてひきうけ案文をかいた。(断っておきますが、ぼくは無党派です)。
有罪判決が出たが、結局、背後関係は解明されなかった。ナターシャは絶対に背後関係があると協調していたが、証拠がないのでは仕方がない。「日本もマフィアがうごめくロシアのようになってしまうのかしら」と暗い情状で語っていたナターシャの顔が記憶に残っている。
日本の「闇の勢力」は、確実に深く広く広がっていると見ておいたほうがいいだろう。ライブドアや土木建築業界との関わりが、どれほど解明されるか。さらに闇の勢力と政治との関わりまで解明できるかどうか。検察の捜査を、あまり期待をせずに見守りたい。