コラム


by katorishu
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バブルの塔、六本木ヒルズ

 2月13日(月)
 午後、六本木で脚本アーカイブスの会議。六本木に行くたびに、例の六本木ヒルズの建物が目についてしまう。すぐ近くには何度となく足を運んだが、一度も中に入ったことはない。
 どう見ても「バブルの塔」に見えてしまう。
 中に入っている事務所にしても店にしても、ぼくには縁がなさそうなので、これからも恐らく足を踏み入れることはないであろう。
 六本木ヒルズが建つ前、あの地にはテレビ朝日の古い建物が建っていた。そこには何度も番組の打ち合わせなどで足をはこんだが、思えばあのころはあの界隈も下町の雰囲気が残っていた。
 そこで働く人たちも、人情味をもっている人が多く、金金金などと誰もいわなかった。
 金より、どうしたら人に感動を与える番組ができるか、そっちのほうに心を砕く人が多かったという気がする。
 近くのアイビスホテルで、プロデューサーの「監視」のもと、カンヅメになって徹夜で台本を仕上げたこともある。

 私見によれば、バブルのころから、日本人の心が変わってしまったという気がする。
 当時から、バブル時期に精神形成をとげつつある少年少女のことが心配だと思っていたが、それが残念ながら現実になってしまったようだ。
 当時、中学生、高校生であった人たちが、人の親になろうとし、社会に責任をもつ世代になっている。ところが、バブル期の大人たちの狂乱を見て育ったせいなのか、我欲をかき、「勝ち組」になった人が人生の勝利者という「刷り込み」が行われてしまったようだ。
 刷り込みについては本人は無意識なので、一種、本能のようなもので、自分の「意志」でそうやっていると思っている。マインドコントロールも刷り込みの一種だろう。
 子供のころに刷り込まれたことは、よほどのことがない限り、消えていかない。
 始末のが悪いことである。

 自己犠牲とか社会のためとか……ひと時代前のまともな大人なら、心のどこかにもっていたものを欠落させてしまった人が多くなっている。
 若者に限らず、オッサン、オバサンの間でも、よく見られる現象だ。

 本日の会議には、IT関係に強い人も参加した。IT技術がここまで深く社会にはいりこんでしまった以上、これを排除することはできない。
 IT技術をどう活かせば、多くの人間が幸福になれるのか。幸福とは「数字」や「物」の多寡でななく、「心」のありようなのだということを深くかみしめながら、新しい時代に向かい合うしかない。
 
 六本木ヒルズの建物にもどるが、あれを見るたびに、バブル経済が生み出した「罪」について思ってしまう。あの建物はそもそもバブル期に開発が予定されていたものだ。
 もちろん、バブルの「良さ」も少しはあったことは否定しないが、マイナス面が多すぎる。今の日本の混迷や閉塞感も、バブルを起こして急速にバブルをつぶした日本のリーダーたちの「経済政策」にある。
 日本がアメリカの要請に唯々諾々と従い、アメリカを「覇権国」にするのためのコヤシになったことは否定できない。1980年代半ばの「プラザ合意」あたりがきっけである。
 当時の竹下首相が、確かレーガン大統領に押し切られたのである。

 当時から対米従属は甚だしかった。その第一の責任は当時の政府と官僚にある。
 このへんの事情を、多くの国民が知らなすぎる。バブルを生じさせ、これを急速にしぼませたことによって、どれほど日本人が傷ついたか。
 一方で、役人たちのしたい放題。社会保険庁のあの無駄遣いなど、氷山の一角である。
 今の膨大な財政赤字の根源も、そこにある。
 ところが、当時の与党、自民党も旧大蔵官僚も、誰ひとり責任をとっていない。そんな事情を知れば、政財官の癒着を維持しつづける自民党に投票する気など起こらぬはずなのだが。
by katorishu | 2006-02-14 01:05