コラム


by katorishu
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ロケ現場で、みかじめ料

 2月16日(木)
 本日も図書館と喫茶店で計8時間ほど、ない知恵をしぼって、原稿書き。最近、妙に脳のことを意識する。例えば健康な人は胃とか心臓とかを普段、ほとんど意識しない。
 あまりに意識するということは、脳がちょっとおかしくなっている証拠なのかどうか。
 一冊のノンフィクションを書く際は、膨大な資料にあたる場合が多く、個人の脳の処理能力を超えそうなときがある。

 固有名詞は忘れることが多いが、まだ脳はだいじょうぶだと思いたい。脳科学者によると、脳は体とちがって、使い方次第で、加齢によっても劣化しないそうです。
 あと15年は文筆家業を続けたいので、今、脳がフリーズすると困るのです。

 図書館で脳休めに週刊誌を読んでいたら、NHKの子会社、エンタープライズ制作の土曜ドラマの新宿歌舞伎町ロケで、暴力団関連に「みかじめ料」が渡ったと出ていた。テレビなどですでに報じられているが、番組の責任者は某女性エクゼクティブ・プロデューサーとのこと。
 多分、あの人だと顔と名前が容易に浮かぶ。

 当初、ロケ現場を仕切った「外部スタッフ」は、歌舞伎町ロケは危ないとそのプロデューサーに
いったそうだが、このシーンはここでなければ、と女性エクゼクティブ・プロデューサーは主張し「危ないロケ」を敢行したようだ。

 歌舞伎町で映画やテレビのロケをする際、トラブルをさけるため、縄張り内にある組事務所に「挨拶」をするのは「常識」のようになっていた。
 映画やテレビの関係者から、あそこに50万払ったとか、どこそこに80万払ったとか、ぼくは直接耳にしたことがある。共通することは「歌舞伎町ロケは大変」ということである。

 以前、ぼくが書いた市原悦子主演の「新宿カラオケ女医者」なる4回連続読み切りのドラマがある。ずばり歌舞伎町のラブホテル街が舞台だった。
 当初、架空の人物であったのだが、プロデューサーや監督とシナハンをしていると、現実に歌舞伎町の一角にあるラブホテルの隣に診療所をかまえている女医がいたので、驚いた。
 しかも、その女医は小太りでカラオケ好きだった。で、その人にいろいろ話を聞いて脚本を書いた。

 新宿ロケのとき、「みかじめ料」を払ったかどうか、ぼくはプロデューサーに聞いていないが、想像はつく。すでに15年以上前のことで、新宿もまだ牧歌的空気が流れていた。
 映画出身のあの作の監督も亡くなり、レギュラー出演していたレオナルド熊さんも亡くなり、ゲスト主演した乙羽信子さんも亡くなってしまった。

 一昨年であったか、新宿歌舞伎町そのものをメインの舞台にした「歌舞伎町案内人」(正確なタイトルではないかもしれない)という映画の試写を見た。主人公は中国から密入国した中国人で、中国人相手のガイドで生計をたてている。実在の人物をモデルにしたものだった。監督も中国人だった。
 知り合いのプロデューサーが関わっていたので呼ばれて見にいったのだが、歌舞伎町でのロケは大変であったと話していた。

 あまりに制約が多く、結果として画面に歌舞伎町の猥雑さが浮き出ていなかった。40年以上も前から歌舞伎町を知っている者として、NHKのやり方はなんとも軽率であったと思う。
 最近はほとんど足を運ばないが、ひところは週に三度ほど足を運んだ時期もある。観察者として、いろいろな人間と接して見てきたが、暴力団だけは慎重にさけてきた。
 一度、飲み屋で暴力団の親分らしい男に脅されそうになったが、平身低頭すると、「ま、一杯飲め」とビールをすすめられ、それで事なきを得たが。
 当時は「東声会」が仕切っていた。その前は「尾津組」で、会長は男気があり、任侠の気風をもっていたと、諸先輩から聞いていた。
 今は中国マフィアや台湾マフィアなどもからんで、わけがわからなくなっている。

 今度の件で、「外部スタッフ」は「常識」に従って金をわたしたのだろうが、10万円では安すぎる。これが「週刊新潮」に漏れた原因ではないのか。その外部スタッフがもらすはずはないので、受け取った関係者がもらしたに違いない。推測だが、「少なすぎる」と不満を覚えたことは十分考えられる。

「はした金」であったら、一銭も渡すべきではないのである。ヤクザや暴力団にも「プライド」がある。こんなはした金で領収書まで切らして、お前、ひとをおちょくってるのか、と思ったことも考えられる。
 あのへんは石原慎太郎知事の管轄なだから、もし地元ヤクザがいちゃもんをつけてきたら、都知事に話す……とでもいっておけばいいのに。
 要するに「素人」なのである。

 いつであったか、某氏からNHKの元看板ディレクターが渋谷でロケをしたとき、当地を仕切っていた安藤組の組長の安藤昇氏と、サシで談判したエピソードを聞いた。大変面白い話で詳細をメモにとっておかなかったことが悔やまれる。
 NHKに限らず、民放テレビも映画界も、「豪傑」がいなくなり、「秀才」の「お坊ちゃん」「お嬢ちゃん」ばかりになってしまった。

 日本は平和なのか、ノウテンキなのか。あるいは崩壊の坂道を転げ落ちているのか。テレビをつけると、武部自民党幹事長の次男にホリエモンから3000万円が渡ったとか、民主党議員が予算委員会で暴露質問をしていた。それに対して小泉世襲首相は「ガセネタ」と断言していたが。事実だとしたら、小泉政権は終わり。事実でなかったら、民主党は危ない。
by katorishu | 2006-02-17 01:53