コラム


by katorishu
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このままでは「情報の暗黒時代」になる

2月27日(月)
 午後、地下鉄千石駅で、脚本家の津川氏と待ち合わせ、「アーカイブ事典」ほかの本を受け取る。研究報告の資料である。
 蕎麦屋で鴨せいろを食べながら、電子記録の脆弱性などについて意見交換をした。
 そのあと、久しぶりに巣鴨にでて、喫茶店で仕事。骨休めに津川氏から受け取った本を読んだ。

 過日のアーキビストの小川千代子氏の話や、小川氏の著書「電子記録のアーカイビンブ」などを読んでいると、「電子政府」などといってデジタル化をすすめている日本や「IT先進国」の将来が不安になる。

 資料の長期保存を考えるアーキビストから見ると、現在デジタル化されている情報の大半は50年後には消えてなくなる……といったことを具体例をあげて、説得力ある論を展開している。
 アメリカで上映されたビデオ「Into the Future」を見たIT研究者等は一様にショックを受けたとのこと。アメリカが1960年代に行った月探査に関する情報のうち、NASAが磁気テープに保存した情報のうち10パーセントがすでに「崩壊」してしまったという。

 デジタル情報というのはアナログ情報と違って、目に見えない。見えるようにするには記録を引き出す装置が必要になる。ところが、デジタルの世界は技術が日進月歩で、ものすごい早さで「進歩」している。この「進歩」がじつはくせ者で、5年、10年とたつと、以前に記録したものが読み込めなくなるケースが実に多いのだという。

 フロッピー・ディスクは現在発売しているノートパソコンでは使用できなくなっている。CDやDVDも同じ運命をたどるようで、10年後には存在しているかどうか、はななだ疑問であるという。つまり、そういうものに記録された情報は10年後には読み取れなくなり、無に帰してしまう可能性が強いというのである。

 ぼくは早い時期(1982年)からワープロを使っていたが、当時使用していた大きなフロッピー・ディスクを読み取る装置は、とっくの昔に生産を停止してしまった。使っていた読み取り装置が故障したが、メーカーでは部品等も残っていないので修理もできない。で、そこに書き込んだデジタル情報は「無」になってしまった。
 幸い、7割方は、新しいフロッピー・ディスクにいれておいたが、そのフロッピー・ディスクも、早晩、使えなくなる。

 こういうことの繰り返しで、電子情報は劣化していく。個人の小さな情報ならいいが、公的なところに記録されている情報は膨大なもので、それを5年ごとに新しい記録装置に置き換えなくてはならないのだという。手間も経費も膨大なものになり、さらにサーバー等の脆弱性も加わる。小川氏の予測はこう「悪魔的な予言」をする。

「例えば、数百年後、歴史をひもとく私たちの子孫の間にはこんな定説が生まれるかもしれない。20世紀末から21世紀初頭にかけて、資料はほとんど残っていない。理由は、当時流行した記録媒体にある。当時はコンピュータを用いて記録を電子的に作成・送付・保存していた。だが、この媒体は記録媒体としては劣っていたので、21世紀末にはほとんどすべてが読み取れなくなってしまった」

 「情報の暗黒時代」であるというのである。小川氏の著書を読んで、うーんと唸ってしまった。
 過日の勉強会で、小川氏が、現段階では「記録はアナログ、つまり紙媒体などが一番」と強調していた意味や、IT雑誌の編集長をしていた人の危惧がよくわかった。
 こういうコンピュータの脆弱性、危険性を知ってか知らずか、政府はあらゆる分野で「デジタル化」をすすめている。IT業界や電気製品業界に配慮しているので、危険性を公言できないのかもしれない。
 
 すでにアメリカではいろいろな情報をIT化することの危険を自覚し、情報のデジタル化にブレーキをかける動きも出てきているようだ。
 一方、日本政府は、ITを打ち出の小槌のようにいいまくった竹中大臣らを中心に、危険な方向に「日本丸」を導いていこうとしている。 
 竹中氏が経済学を学んだときの「アメリカ」はすでに「古いアメリカ」になるかもしれないのである。なのに、相変わらず、ブッシュ政権の「アメリカ」の旗振り役を演じている。
 例の「偽造メール」で民主党の支持率がガタ落ちし、かわりにまた自民党の支持率が上昇した、とテレビが伝えていた。
 心ある日本のみなさん、早く目をさましてください。このままいくと日本は本当に「タイタニック号」になりますよ。
by katorishu | 2006-02-28 02:48