『 ALWAYS 三丁目の夕日』シナリオ・ライターにも光を
2006年 03月 07日
アメリカのアカデミー賞の最優秀作品賞は『クラッシュ』と決まった。ロサンゼルスのハイウェイで起こった一件の自動車事故をきっかけに、さまざまな人種、階層、職業の人間たちの感情が複雑に絡まりあいながら、それぞれの人生に交錯していく様子を繊細に描いたヒューマン・ドラマ、ということだ。
『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本家ポール・ハギスの初監督作。早く見たい作品である。
一方、日本でこの賞の二番煎じとして行われている日本アカデミー賞は、『 ALWAYS 三丁目の夕日』が賞を総なめした。テレビで受賞風景を放送しており、ぼくはちらちら見ていた。
気になったことがあった。
この映画の監督や出演者は派手やかに顕彰されていたが、映画の土台をつくった脚本家はほとんど無視されていたのである。
シナリオを書いたのは古沢良太氏で、テレビ朝日が平成12年に創設した「テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」の第2回の受賞者である。『アシ』という作品で、アニメ制作の現場でアシスタントとして働く青年の屈折した感情が、コメディチックな描写の中に鮮やかに描かれていた。
このシナリオを雑誌『ドラマ』で読み、感嘆したことを覚えている。軽快で心地よく物語りが進み、人生を一瞬遠くに感じさせるものだった。
「この人は必ず世にでてくる」と読後、思った。当時、受け持っていた早稲田大学二文の授業でとりあげたこともある。
彼が『 ALWAYS 三丁目の夕日』の脚本を担当していることを、昨日知った。このところ仕事が忙しく、この映画を見ていないので作品の評価はなんともいえない。
余談ながら、作中、重要な役割を演じる子供は拙著『子役という仕事』の中でとりあげています。興味のある方は、本を読んでください。
それはともかく、映画業界で脚本家、シナリオライターの軽視は今も続いている。
一方で、 映画の中でシナリオの占める位置は7割であるという意見があり、それは全く正しい。
日本映画界を代表する監督である今村昌平氏にインタビューしたとき、今村監督からぼくは直接こう聞いている。
「シナリオが7で、役者が2、演出・監督なんて1ですね」
それほどシナリオは重要なのである。なのに、金銭的にも名前の上でも恵まれない。作品が成功すれば監督や役者にスポットライトがあたる。逆に「失敗」(営業成績が悪いこと)すれば、シナリオ、脚本のせいにされる。まったく割に合わないことだが、この種のことは日本社会の至る所にあるのではないか。
■本日は北品川の広いコーヒー店で正味6時間、仕事。一応最後まで書き上げたノンフィクションの原稿の推敲をした。正味3ヶ月ほどかけて書いたので、自分でいうのもアレですが、「力作」である、と敢えていわせていただきましょう。
数ヶ月後、文藝春秋社で出ますので、その節はぜひお読み下さい。タイトルは未定です。
店に長居したので、コーヒーを数杯飲む羽目になり、胃が重い。さて、これからまた明け方まで仕事。貧乏暇なしというか、ワーカーホリックなんですね。