コラム


by katorishu
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格差社会の現実

3月14日(火)
■JR大森駅近くの喫茶店で鈴木さんに会い、ノンフィクションの原稿を渡すとともに、中国について1時間ほど意見交換。良くも悪くも今後の日本にとって大変重要な国だが、懸念材料が沢山ある。中国および中国人をよく知れば知るほど、この国の抱えている問題の困難さに溜息が出るようだ。
 13億という巨大な人口をひとつにまとめていくには、そもそも無理があるのだが、「2010年の上海万博以降が危ない」という点で意見が一致した。

■さて、アメリカと中国の間で、揺れている我が日本だが、こちらも心許ない。
 「文藝春秋」4月号にノンフィクション作家の佐野真一氏の「ルポ下層社会・改革に捨てられた家族を見よ」が載っている。品川図書館で仕事をする傍ら読んだのだが、日本社会の「影」の部分を鋭く指摘しており、興味深かった。
 氏は都内で最も貧困層が多い足立区に足を運び、義務教育関係者や、子育て中の親などの話を聞いている。足立区では「就学援助」がこの4年で4割も増え、全体で4割を越える生徒が、給食費などの援助を受けているという。
 以前から、ときどき区内の「学びピア」に足を運ぶことがあり、区の職員から「貧しい区なんですよ」と話には聞いていたが、佐野氏のルポは衝撃的だ。

■詳しくは本分を読んでいただきたいが、一家4人で年収190万円で暮らす人や、給食がない夏休みに体重が減る児童の話など、「経済大国」日本とは思えないケースが至るところで生まれている。決して例外的なケースではなく、ごく「普通の光景」となっている。
 小泉改革による「格差」が具体的な形でひろがっていることを、実感させてくれる好ルポだ。
 格差は学力にも確実に反映しているようで、このような「足立区化現象」がほかにも広がっていく可能性が強い。
 明治大正期の東京の貧困層のルポを読んだことがあるが、あれに近いものが今の東京に生まれつつある。
 本日、大森駅近くにも路上で寝ているホームレスが何人かいた。以前は新宿や渋谷、隅田川の堤防近く……でしか見なかったのだが、こんなところにまで広がってきている。

■中国でもそうだが、貧富の格差が極端にひろまることは、「諸悪の根源」となる。
 古来、戦争の原因はつきつめれば「食える」「食えない」の問題に行き着く。「食えない」人間を大量に増やしてはいけないのである。モラルの荒廃を生むし、社会が不安定化する。
「民をいかに食わせていくか」それが指導者の役割で、本来辛い仕事なのだが、「世襲議員」には緊張感もなく、わからない。その間、日本の土台が少しづつ腐っていく。

■米軍の「引っ越し費用」として小泉政権は3兆円も出すようだ。アメリカは現在、厚木から岩国への移転も含めて、世界規模での米軍再編(トランスフォーメーション)を進めているのだが、沖縄の7000人をグアムに移転させるなどして機動部隊として再編
成する費用を負担させられることになる。
 日米安保で守ってもらっているのだから、当然……というのだろうが、すべてアメリカの都合につきあわされ「ATM」機の役割を担っているのである。出所はすべて税金である。9月以降、消費税をふくめ「大増税」の嵐がやってくる。そうしてアメリカ従属化が進み、日本はへんてこりんな社会に傾斜していく。
 ぼくなど、そう長くは生きないからいいけど、若い人は大変だ。もっと政治を「監視する」目をもったほうがいいと、老婆心ではなく「爺心」で思う今日この頃です。
by katorishu | 2006-03-15 00:43