アメリカ映画のすごさ
2006年 03月 21日
■久しぶりに銀座にいった。松屋デパートで開かれている森小夜子氏の人形展「民族の賛歌、ときをこえて」を見るため。京都嵯峨野に在住の人形作家で、アジアの少数民族に似せた独特の雰囲気の人形をつくりつづけている。去年は中国楼蘭がテーマであったが、今年はタイ奥地の少数民族がテーマ。以前、NHKの人形教室の番組に講師として出演していたので、記憶にある方も多いかと思う。売約済みも多く、人気の高さが伺えた。
■ついでに和光裏の銀座シネスイッチで映画を見る。「アメリカ、家族のいる風景」。ヴィム・ヴェンダース監督、サム・シェパード脚本・主演。「パリ、テキサス」以来20年ぶりのコンビで、制作された映画。今はすっかり落ちぶれてしまったかつての西部劇スターが、新作の撮影現場から突然姿を消し、30年ぶりに故郷を訪れ、老いた母親に再会する。そこで20数年前、彼の子供を身ごもったという女性から連絡があったことを打ち明けられる。彼はモンタナにいき、その女性と息子、そうしてまた別の女に生ませた娘と会う。
すでに男は60歳過ぎ、自分の人生を振り返って、そこに何の意味も見いだせなくなり、突然撮影現場から姿を消したのだが。
男を演じるサム・シェパードの渋く、独特の表情、皺の寄り具合等々。さらに彼の実の妻でもあるジェシカ・ラングの名演技がすごい。男の孤独感、寂寥感が画面から強く漂い、胸に迫る。カントリーウエスタン調の音楽や、小道具の使い方も秀逸。
ハリウッド映画特有のご都合主義や華やかさは微塵もなく、風景は荒涼としている。アメリカというと、ニューヨークやロサンジェルスの印象が強いが、砂埃の舞う郊外の町こそが、アメリカであるという気分にさせる。日本映画だと、べたっとした感じになりそうな「親子関係」を、クールに、しかも暖かく描いている。
見終わって、ジーンと胸に迫るものがあった。脚本、演技、監督の持ち味が存分に出た映画として堪能した。さすがアメリカ映画であり、奥が深い。同時に、映画はやはり暗い映画館で見ないと、本当の良さはわからない、と思ったことだった。4月17日まで上映中です。「家庭劇」の変種だが、親子関係をあつかったものとしては、スペイン映画の傑作「オールアバウト・マイマザー」を見たとき以来の感動を覚えた。見て損はないですよ。