コラム


by katorishu
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一見「ムダな読書」こそ大事

4月12日(水)
■日本放送作家協会のホームページの「放送人インタビュー」の件で、東京ビデオセンターの代表の中村芙美子氏にお会いする。ドキュメンタリーを中心にテレビ番組の制作をしている制作会社で、中村氏は創立のときの3人の1人。36年間続けてき、今は100人を越えるスタッフをかかえている。思考が柔軟で謙虚。還暦をすぎて尚第一線で仕事をしているのもいい。学生時代は「演劇に打ち込んでいた」という中村氏。話されたことすべてを紹介できるわけではないが。詳しくは日本放送作家協会のホームページに、いずれ載ります。ぜひ、ご覧下さい。
URLは、 http://www.hosakkyo.jp です。

■夜昼逆転の生活を続けてきたためか、このところ体調が悪く、口内炎はできるし、痔もぶりかえした。その上、眼精疲労で偏頭痛。で、本日は仕事ができず、シャーウッド・アンダスンの『ワインズバーグ・オハイオ』を拾い読み。24の短編でオハイオの田舎町に生きる「普通の人々」の生活ぶりを描いている。すでにアメリカ文学の古典ともいうべき文学になっている。

■ワインズバーグ・オハイオの町に生きる人たちの生活の断片を描きながら、総合的に町の雰囲気を浮かび上がらせるもので、この形式はアメリカではアンダスンが創始したのだという。「ワインズバーグ形式」といわれているそうだ。
 1919年の出版で、「古き」「良き」アメリカに生きる庶民の息づかいが伝わってくる。このごろ、小説を読む時間がなかったが、小説は面白いと、あらためて思った。時代の激変期であり、実録ものが面白いことは事実だが、過去の文学作品を読むことも必要だ。

■「ジョイントゼミ」に参加した青山学院の女学生が送ってきた短編脚本について、近くのコーヒー店で直接会って講評。彼女は小学校のときアメリカに住んでいたとのことで、なかなか意欲的だ。オー・ヘンリーの短編が好きとのことであったが、今後どの分野にいくにせよ、学生のうちは、ハウツーものの本より、出来るだけ文学や哲学などの「古典」や「堅い本」を読むとよいとアドバイス。若いときに、本をよく読むか読まないかは、その後の10年、20年の間で、大きな「差」となってくる。
 カネを儲ける云々には直接役立たないかもしれないが、人間として豊かさの土壌になるはず。一見、「ムダ」で「役立ちそうもない」ことが、じつは大事なのだが、効率化が最優先される社会では、その反対の道をいこうとする人が多すぎる。
 新しい芽は、「ムダ」な土壌から出るものである。

■「月刊現代」の5月号に、IT時代の「勝ち組」の例として、株取引などで「一生食えるだけの」資産を築いたという35歳の男のことが載っていた。その人は35歳でリタイヤをするのだという。死ぬまで遊んで暮らそうというのか。、その年でリタイヤをして、何をするというのか。10年、20年後の世界など、どうなっているかわからない。
 それに、人間、80,90になれば、自然に天が「リタイヤ」をさせてくれるのである。なにも「急ぐこ」ことはないのに。こういう人間の気がしれない。
by katorishu | 2006-04-13 00:06