コラム


by katorishu
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山本周五郎の小説

 4月22日(土)
■高田馬場でシナリオ塾の講義。受講者は男性ばかり。最近、この種の「学校」の受講者の数が減っているという。特に減っているのが「主婦」であると、過日も別のシナリオ学校の関係者から聞いた。その人は「旦那の収入が減って、節約する必要があるので、こういうところに来る余裕がなくなっているのでは」と話していた。
 本日、生徒にその話をしたところ、「主婦の人はパソコンで株のデイトレードかなにかをしているんじゃないですか」とのこと。どちらが真実をついているのかわからない。ほかのカルチャーセンターなどではどうなのか。

■いずれにしても、「景気がよくない」ことが、社会のいろいろなところに波紋を広げているようだ。最近、ぼくの接する人の大半は「景気が良いなどと実感できない」人なので、政府のいう「景気が回復した」という見解がわからない。
 もっとも、ぼくの知り合いにもごく一部には、株の取引などで相当儲けている人もいるようだ。あまり、そういう人とはつきあいたくないので、疎遠になっているが。
 やっぱり、額に汗して働く……これが人の生きる原点でありたい。昔、作家の山本周五郎はタクシーなどにもほとんど乗らず、もっぱら移動手段として歩くかバスを利用したという。
 バスの中には庶民の生活があり、小説のタネもいろいろと転がっている。自動車に乗ったりするのは、バカですよ、といった意味のエッセイを書いていたと記憶している。
 そんな地味な努力のはてに山本周五郎の小説が成り立っているのである。

■一事が万事、そうなのだろう。いかにも一本筋を通した大衆作家らしい。
 山本周五郎の作品は、ひところ若い人にもよく読まれていたようだが、今の若い人にも読まれているのだろうか。大衆作家のなかでは、文章に凛としたものがあり、ぼくの好きな作家のひとりである。今でも時々短編を読んだりする。
 ごく普通の庶民が日常的に山本周五郎を読んでいた時代があった。昔はよかった、というつもりはないが、山本周五郎をよく読まれていた時代には、節度といったものがあったという気がする。

■時間のある方に、ぜひ山本周五郎を読むことをお薦めします。人間の生き方について、発見があります。それよりなにより面白い。藤澤周平もいいが、山本周五郎ならではの温もりがあり、読み終わったあと、心が浄化されることが多い。
 本日は寝床で「町奉行日記」を読もうと思う。うまく眠れたらお慰みです。
by katorishu | 2006-04-23 01:09