コラム


by katorishu
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南米、ラテンアメリカに誕生する反米政権

 4月24日(月)
■江戸川区の森下というところに初めていった。大学のサークルの先輩で映画評論家の松島氏とビールを飲みつつ歓談。カミサンも一緒。松島氏は毎日新聞学芸部で映画評を担当していた。何年も前に定年退職して文筆に専念している。

■いかにも下町といった雰囲気の大衆酒場には、職人風の客が多くきていた。安くてうまい、というのはありがたい。大学時代の学生運動の話など話は弾んだ。ぼくは学生運動とは無縁であったが、松島氏は安保闘争のころ大学生であった関係で、セクト間の争いを実体験しているし、全学連が国会を包囲し、東大の女学生のカンバ美智子さんが死亡した6,15事件のときも国会周辺のデモ隊の中にいたそうだ。

■マスコミでは千葉補選で民主党の26歳の新人候補が、自民党の「エリート」を破ったことでもちきり。「勝ち組」対「負け組」の対比が鮮やかにでた選挙で、庶民の欲求不満が選挙結果に表れたのだと思う。一党独裁に近い政治状況に風穴があいたことは、慶賀すべきことだろう。

■これで面妖な法律「共謀罪」などが廃案になればいい。野党の反転攻勢に期待したい。とにかく「強いものがますます強く」「富めるものがますます富む」という社会は不安定になるし、好ましくない。この流れにクサビを打ち込むために、野党に頑張って欲しいものだ。

■総合雑誌の『論座』に、ラテンアメリカに続々と反米政権が誕生しているとの、元ペルー大使館一等書記官の報告が載っていた。ラテンアメリカや南米に共通することとして、社会格差の拡大により「経済のグローバル化」の恩恵に浴する階層と、恩恵から切り離されて逆に地盤沈下してゆく階層の差が大きくあらわれているそうだ。沈下したのは、貿易の自由化によって破綻した製造業の中小企業や独立自営農民、安定雇用を失った給与労働者階層であり、彼等が中間階層から貧困層に陥ることで貧困層が増大した。
 その結果、庶民の不満が反米政権の誕生を促した。

■世界規模で、とくに庶民レベルで反米気運が高まっている。元一等書記官とはベルーの日本大使館人質事件で人質となった小倉英敬氏で、報告の最後でこう結論づけている。
『重要なことは、これら反「自由主義」を掲げる諸政権の政策結果を評価する場合、「経済優先」の立場から経済的パフォーマンスだけに焦点を絞って論じることは無意味であるという点である。そうではなく、社会的弱者をいかに救済するか、富の再分配をできるだけ平等にする社会を目指すにはどのような選択肢がありうるのか、という問題意識を視野に入れて論じるべきだろう』

■まったく、その通りである。アメリカが早く一国覇権主義の立場を捨てて、弱肉強食のグローバリゼーションを他国へ押しつける政策を撤回しないと、やがてアメリカ自体が衰亡にむかっていくだろう。人間の価値観はもっと多様であるべきだし、文化の多様性を互いに尊重しあうとこにこそ、「共生」が成り立つ。もちろん人権問題で抑圧されている民族をほったらかしにしていいわけはないが、力づくで政体を変更することは、イラクの例で見るように成功しない。

■敗戦後の日本での「成功」がブッシュ政権の政策立案者の頭にあるようだが、これは希有の例である。日本が抵抗する意欲もなくすほど徹底的にたたきのめされたという背景があってこそ、成功したのである。ブッシュ政権を支えるネオコンの諸氏には、どうも「人の情け」が感じられない。「情」の欠けた人間が指導者になると、ろくなことはない。ナチスドイツのヒトラーで実証ずみのはずなのに、権力者にのしあがる人には「情」など邪魔なのだろうか。逆にそんな「情」があると、組織の頂点や権力の頂点にのぼっていけないのだろうか。独裁者で「情」をもった人は、歴史上皆無である。庶民レベルでも最近「情」をもった人が減ってきているような気がする。由々しい事態である。
by katorishu | 2006-04-25 04:02