コラム


by katorishu
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物事には裏がある

 5月25日(木)
■快晴の天気の日は気分も良い。西葛西の映画専門学校で3回連続講義の、本日が最終回。この4月に入学したばかりの1年生、100人あまりの生徒を相手に2回分の講義。監督志望、俳優志望、スタッフ志望等々、映画を職業にしたいと期待している若者の集団で、数人をのぞきみんな真剣そのものである。映画の仕組みや、映像のマジック、映像の裏にある言語の大切さなどについて、話す。どれほど伝わったかは、わからないが。熱心なことだけは確かである。
 90分の講義を15分の休憩をはさんで連続2回というのは肉体的にきついのだが、脳の衰えをふせぐには人前で長時間まとまった内容を話すことはいいようだ。講師料はごく安いものだが、若い世代に何かを伝えたいと思うと同時に自分の脳細胞の劣化をふせぐために、ときどき頼まれると出向いていく。

■過日、ちょっと触れた公明党の竹入元委員長を告訴した件。86年に「妻の指輪を買うために横領した」として公明党が告訴した件であるが、本日発売の「週刊新潮」がさっそくとりあげていた。20年たつと提訴する権利が失われてしまうので、告訴したとのことである。
 竹入氏は今年、80歳、日中国交回復に貢献したこともあって「勲一等旭日大勲章」を授与されている。「週刊新潮」によれば、池田大作名誉会長は自分には手もとどかない勲章を、竹入元委員長ががもらったことが「許し難い」ことなのだという。契機となったのは、竹入氏が回顧録で公明党は創価学会に従属していると書いたことで、名誉会長は裏切ったとして激怒したとのこと。

■週刊誌というのは、よくもまあ毎週、いろいろのスキャンダルネタを集めてくるものだ。中にはガセネタや誇張もありそうだが、大マスコミが書かないことを敢えて書く果敢さの中に案外、真実がひそんでいて、面白い。ぼくは毎週、3誌か4誌目を通している。買うのは2誌程度だが。

■本日の講義でも強調したが物事にはたいてい裏がある。光があれば影があり、影があれば光があるのと同様である。
 よく「美談」なるものがときどき報道されるが、時間がたつとメッキのはがれるものもがじつに多い。「善」だけの人間もいないように、「悪」だけの人間もいない、というのがぼくの基本認識である。
 一人の人間の中には天使の部分と悪魔の部分が同居しているのだと思う。たいていの人は悪魔の部分を理性や社会の規範、モラル等の抑制装置で抑えこんでいるのだが、たまにそのブレーキがきれて悪魔の部分がむきだしになってしまう人がいる。その類の人が犯罪者になるのだと思う。

■「創作」という作業は人間の心の深部に宿る悪魔的部分を昇華して「良い方向」にもっていく装置でもある。三島由紀夫がエッセーで、自分はもし作家になっていなかったら犯罪者になっていたかもしれないと記していた。本音であったと思う。
 逆にいえば心の深部に悪魔的な部分を強く宿している人のほうが、「創作」という作業では力を発揮するのかもしれない。人間はうまい装置をつくりだしたものである。この装置がなかったら、もっと犯罪は多発しており、ひょっとすると人類はここまで繁栄しなかったかもしれない。
by katorishu | 2006-05-26 00:51