コラム


by katorishu
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細木数子氏と週刊誌 

 5月29日(月)
■生来、野次馬根性が旺盛なのか、「週刊誌」を読まない週はほとんどない。本日発売の「週刊現代」も、週刊誌ならではの記事がいくつかあり、散歩に出た際、コンビニで買い、コーヒー店で読んだ。今週号の目玉は「細木数子は暴力団最高幹部に私の原稿つぶしを依頼した」というノンフィクション作家、溝口敦氏の記事だろう。

■週刊現代に連載中の同氏のルポ「魔女の履歴書」で、細木数子氏の過去が徹底的にあばかれたことに対し、細木側が攻勢に出、週刊文春に溝口氏への反論インタビューを載せた。そこまではいいとして、溝口氏の記事によれば、細木氏は暴力団幹部を使って言論を封じ込めようとしたという。

■溝口氏は暴力団の元幹部と現役幹部とのくわしいやりとりを具体的に生々しく記している。細木氏は圧力をかければ溝口氏が筆をまげると思ったのだろうか。どうも逆効果になってしまったようだ。
 そういえば以前、暴力団の抗争などをしばしば特集記事であつかう某週刊誌の編集者が、細木氏とそのスジの人とのつながりについて話していた。本当であろうかと、その時は思ったのだが……。
 現在、細木氏はテレビで「高視聴率」をとる「貴重な存在」になっているようだが、テレビ局は週刊現代の記事を見て、どういう対応をするだろうか。少々、気になるところである。

■それにしても、暴力団の最高幹部を前にしても一歩もひかない溝口敦氏の覚悟のほどはすごい。氏は暴力団やエセ同和などにも果敢に切り込んでいく記事をしばしば書き、以前、暴力団関係者に刺されたこともある。
 2年前に出した『食肉の帝王』など、日本の暗部に肉薄したもので、文字通りからだを張った取材であったにちがいない。組織に所属しているマスコミの記者などマネのできないことで、フリーのライターの「鑑」ともいうべき人である。

■日本という国の底には闇の部分がまだ多い。マスコミもあまり触れないアンタッチャブルな部分は日本経済の根っこに入り込んでおり、詳細は不透明である。
 溝口氏は一貫して文章を武器に、日本社会の暗部に光りをあて、事実を白日のもとにさらす仕事をしてきた。「文弱の徒」のぼくなどとてもマネの出来ない勇気のある人である。こういう果敢さや勇気をもった書き手が、2、30人いれば、不透明な部分も多い政官財の「癒着の構造」ももっと明らかになるのだが。

■ソ連崩壊後のロシアでマフィアがらみの取材をしたジャーナリストが30人ほど殺されている。崩壊後、5,6年ほどに限っても、それだけの数の死者が出ているのである。「ペンは剣より強し」という言葉があるが、歴史をひもとくと、ペンが剣によって封じ込まれてしまったケースが圧倒的に多い。
 1942年生まれだが、氏の果敢さは貴重なものだ。今後、溝口氏に体に物理的暴力が加えられないことを、せつに望みたい。

■週刊現代には毎号、ヌードのグラビアが掲載されており、それがブレーキとなって手の伸びない人がいるかもしれない。つまらない記事ばかりの週もあるが、今号は読みでがあると思うので、350円を出した買っても損にはならないと思う。
 映画の『ダ・ヴィンチコード』を痛烈に批判した宗教学者の島田裕巳氏のインタビューや、「世界中の欲望を支配する『グーグル』は夢か悪夢か」という記事も興味深かった。

■グーグルについては、ホットリンク社長の内山幸樹氏が書いている。グーグルは検索エンジンを開発したアメリカ企業だが、今や世界にある100億ページものホームページを一瞬で検索してしまうという。そののため、グーグルでは20万台ものコンピューターをフル稼働させているのだという。

■「リンク解析」という革新的な技術を開発したおかげで、今やグーグルは世界中の情報を整理し「支配する」ようになっているという。問題はこうした「情報支配」の技術をもった会社がアメリカの会社であることだ、と内山氏は指摘する。
 このままいくと、便利さの裏に、少数のアメリカ企業による「支配」の構図ができあがってしまうかもしれない。情報を管理支配する技術が悪用されると、悪夢のような「監視社会」になる恐れもある。便利さというのは、要注意である。便利さには、必ずどこかに「落とし穴」があると考えておいたほうがいい。
by katorishu | 2006-05-30 02:02