コラム


by katorishu
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共産主義の末路

 6月21日(水)
■「報道ステーション」で北朝鮮の港湾都市チョンジンに生きる人々のルポをやっていた。隠し撮りしたのかどうか、貧困にあえぐ庶民の姿が映し出されていた。冬場は生活のために必要な水を確保するのに半日がかりであったり、寒さの中何時間もバスを待つ人々。極めて非効率な社会のようだ。まだ木炭車が走っているのには驚いた。

■昭和20年代前半、日本でも木炭車が走っていた。煙をもうもうと吐き出す木炭車は、幼いぼくの記憶にも残っている。当時、乗り合いバスはエンジンが非力なので坂になると乗客が降りて歩いたりした。21世紀になるというのに、北朝鮮ではあの当時の日本の生活ぶりである。一方で、金正日やその家族、党の幹部連中は贅沢三昧の生活をしている。人民のための革命が聞いてあきれる。

■ソ連でもそうであったし、中国でも東欧でもそうだが、「人民のための」国家がもっとも貧富の差の激しい社会であり、普通の国民は抑圧され劣悪な状態でかろうじて生きている。ひところは人類の未来を切り開くと理想化された共産主義の実態はこんなものだった。
 多くの国での実例で示された通り、「理想」が先走って人間を考慮しない政治は、ダメなのである。人間はそもそも理想化すべき種類ではなく、欲望や虚栄のかたまりであり、地上におけるもっとも「困った存在」なのである。

■そんなさめて見方を根底に宿して人間社会を見ていかないと、共産主義の愚を何度でも犯す。ぼくの学生時代、共産主義に夢を抱いた人が少なからずいた。
 いわゆる「進歩的文化人」と称する知識人を中心に、現実や実態を知らずに美化し理想化していた。ぼくはロシア語を専門にしていたので、ともすれば共産主義シンパと見られがちであったが、一度も共産主義に共鳴したこともシンパシーを覚えたこともない。嫌悪が先立った。理由は簡単だった。ロシアが共産化される以前と以後の文学を比べたら圧倒的に革命前の文学がはるかに面白く内容が深く濃かった。
 文化の典型例である文学が面白くない国、言論の自由のない国に、ぼくはまったく馴染めなかった。

■学生時代、ソ連文学を何編か読んだが、面白くなかった。ロシア語を専攻したことを激しく後悔したものだ。エレンブルグなどソ連の中でも異端で西欧的雰囲気をもつ作家の作品は面白かったが、社会主義リアリズムにのっとった小説は読む気もしなかった。
 敗戦後、日本がソ連に占領されなくて、本当によかったと思う。旧社会党や「平和運動家」と称する人の中には親ソ的な人間が多く、ぼくなどそういう人から「小市民」とか「思想がない」などとしばしばいわれていた。
 彼等のいう「思想」とはマルクス・レーニン主義の思想なのだった。そういう思想や理想をもっていた人たちは共産主義の実態が暴露された今、どう感じているのだろう。
 かといってアメリカ主導の「金融資本万能」「市場経済原理主義」も同様に悪弊に満ちているが。

■北朝鮮は現在、テポドンを発射するとかしないとかで、日本等に脅しをかけている。こんな無情な独裁国家がなぜこんなにも長く続くのか不思議な気がする。恐らくは中国の支持があるからだろう。中国も共産党一党支配の独裁国家なので、相通じ合うものがあるのだろうか。朝鮮戦争をともに戦った国同士なので、連帯意識がまだ残っていることはわかるが。いい加減で引導をわたしてもらいたいものだ。

■北朝鮮は窮すれば窮するほどますます意固地になって、体制護持につとめるのだろう。
 拉致家族問題も停滞したままである。この問題で経済制裁などをすれば真っ先に飢えるのは前述したルポに登場するような弱い立場の庶民である。

■日本のパチンコ業界からも相当額のお金が北朝鮮に流れており、そのパイプがつまれば経済的に一気に崩壊に向かうに違いない。ひところ売り上げ30兆円といわれたパチンコ産業。経営者のかなりの部分を北朝鮮の総連系の人がしめているそうだ。
 パチンコ好きは、まわりまわって北朝鮮の経済を下支えしていうといってよいかと思う。誰であったかパチンコで儲けることを「北への経済制裁」などといっていた。

■本日、たまたま映画「カサノバ」を渋谷の映画館で見ることになった。ハリウッド映画の典型的な悪い例で、論評する気も起こらない。若い人は結構おもしろがっていたようだが、パターンの連続で新しい発見も驚きもなく、時間の無駄。仕事の関連もあり、ある映画を見るために渋谷にいったのだが、その映画は午前と午後の二回上映するだけで、午後4時から別の作品にかわっていた。インターネットで調べていったのだが、そんなことは記されていなかった。
 で、別の映画を見ようと道玄坂の映画館がいくつもある一角にいったのだが、どれひとつ見たい映画がない。「ダビンチコード」など同じビル内にある二つの映画館でやっていた。見たひとが一様に最悪といっていた。
 そのまま帰ればよかったのだが、少しはましかと思って見た映画が「カサノバ」だった。最近見た映画は面白い映画が多く、「見て損した」という映画はすくなかった。
 ハリウッド映画には秀作も多いが、それに劣らず愚作も多い。
by katorishu | 2006-06-22 01:04