映画、「明日の記憶」に感動
2006年 07月 04日
■ぼくが思っている以上に、このブログを読んでいる人がいて、時折り、連絡などをいただく。見知った人が読んでいるとなると、ちょっと書きにくいなと思うこともある。
ブログは「公開」なので、一日に起こったことのすべてを書くわけではない。もちろん、嘘やなかったことは書かないが、敢えて書かないこと、書けないことも、多々あります。
それではなぜ書くのか……と問われたら、一部は備忘録、一部は今こんなことをやっている、こんなことを思っている、ここがへんだ、ここが素晴らしい……と感じたことを、一応形にしておきたいことかと思います。その中にPRも入ります。ちょっとした情報提供やサービス精神もふくんでいます。さらに自己顕示欲もないとはいいません。一日が終わったとき、ふっと思ったこと、感じたことを、誰かに伝えたいという思いもあるようです。
作品だと、緊張するし、こんなふうに気軽に書けません。スポーツであったら、日々の軽いトレーニング、体(筆)ならしのようなものかもしれません。短い時間に書いているので、誤字脱字が多いのは、ご寛恕のほどを。
■午後、新宿で「ガンジーの会」の世話人会。旧友の文藝評論家の末延氏が2年半前に、イラクへの自衛隊派遣に反対の意志を表明したいと、おもに「芸術関係」の仕事に従事する人に呼びかけてはじまった「ハンスト・リレー・マラソン」。週1回、24時間断食をすることで、意志表明をするというものである。当初は、音楽や芝居、朗読などのイベントができるのではないか、と思って参加していた人も多かったはずだが、インターネット中心のものになり、やや方向が変わっていった。
■現在、当初の発起人で続けているひとは代表の末延氏ほか2人ほど。本日はオペラ歌手の飯村氏、舞台美術の飯村夫人なども出席したが、結果としてぼくも飯村夫妻も、「これが最後」ということになった。メルマガにはぼくは月1回コラムを書くが。
運動が「九条の会」などと似た方向にいき、当初ぼくなどの考えていたものと違ってしまった。ハンストまでしてという切実感もなく、基本認識に違いもあり、更に強いストレスにもなるので、距離をおくことにした。
■末延氏につきあったおかげで、中東問題やイラク問題を考えるきっかけにはなったし、いろいろと勉強もした。その点で意味はあったと思っている。
今後は彼等の運動を、側面から見守っていきたい。ほかにやりたいこと、やるべきことが沢山あり、時間配分を考えると、そこまで手がまわらない。見たい映画、演劇、読みたい本……だけで、「持ち時間」の多くが消えてしまう。さらに書く時間……等々、一日一日が大事だな、と改めて思う。
■夕方、渋谷で映画『明日の記憶』を見た。俳優の渡辺謙が主演でエクゼクティブ・プロデューサーをかねた作だ。原作本を渡辺氏が読み感動し、これを映画でやりたいと思ったとのこと。若年のアルツハイマー病にかかった広告会社部長の仕事と家族に焦点をあてた作で、監督は堤幸彦。
次第に記憶を失っていく男の悲しみと焦りを、渡辺謙が巧みに演じていた。見ていて随所に泣かせるシーンがあり、良い映画だった。妻役の樋口可南子の演技も素直でリアリティがあった。昨今オーバーな演技ばかりの多いなか、出色の作である。
母がアルツハイマー病であったこともあり、この病気の大変さはよくわかる。身につまされながら見た。同時に、もしこの病にかかったら……という恐怖も覚えた。
■あらためて思うことだが、映画は映画館で見るものである。暗い映画館で大画面の場合、作品の中に素直にはいっていきやすい。過日、映画館で見損なった『ALLWAYS三丁目の夕陽』をDVDで見た。小さな画面でも十分面白さがわかり堪能できたが、映画館であったらまた違った感慨を覚えたのではないか。
あの映画はCGを使って昭和30年代前半の日本社会の空気をよく出していた。その時代を知っているので、出てくる小道具などに親近感を覚えた。
■最近、日本映画も頑張っているなと思った。シナリオを書いたままで未だ制作がスタートしない「泪壷」も、なんとか形にしてほしいものだ。資金がネックになっているはずで、制作者の困難さは十分わかるのだが。
中途で頓挫する作品が多いのも、日本映画の特徴である。主な理由は資金難。質の高いものでも、お客の入る見込みのたたないものは、頓挫する率が高い。お客がはいるための最も効果的な方法はテレビ局を制作に加えるということである。そうすると、どうしても局側の意向が働き、『有名スターを』ということになる。有名スターが出なくとも、面白く、見終わったあとじーんとくる作品はいろいろとある。しかし、興業成績の上位をしめるのは、例外なくテレビ局が制作に加わりテレビ画面を使ってがんがん宣伝したものばかり。
結局は、御客の問題なのだろう。御客の質が映画の質をつくりだす。テレビも演劇も、もちろんそうである。