北朝鮮問題は中国・アメリカ問題
2006年 07月 12日
■相変わらず鬱陶しい日が続く。午後、文科省に。脚本アーカイブズ関連で。この社会、何か新しいことをやるとなると、先立つものが問題になってくる。行政も含め、「文化」関連にはどこも資金を出したがらない。「リターン」がないと「出資」をしないのである。文化も一部、金銭を生み出すが、生み出さない文化もあり、地味ながら長い目で見て必要なことがいろいろとあると思うのだが。
■北朝鮮のミサイル発射問題で、関係諸国の思惑が交差し、国連決議が先送りされた。日本はこの問題で近年になく強硬路線を打ち出した。これに対し中国が懸念を表明、アメリカも別のスタンスをとっているようで、どこに落としどころがあるのか見えない情勢である。
■韓国政府が「日本は騒ぎすぎ」と言明したが、それもどうかと思う。金正日政権の独裁的体質を考えると、ミサイル発射はやはり重大な脅威である。北朝鮮はすでに核兵器を所有しているし、生き残りをかけて、いざとなるとどんな強硬手段を打ち出さないとも限らない。
北朝鮮問題は「アメリカ問題」と「中国問題」につきるといってよい。日本の背後にはアメリカがおり、北朝鮮の背後には中国がいる。
中国の錦濤国家主席は11日、北朝鮮の親善代表団と会談し、「中国は朝鮮半島の情勢を悪化させるあらゆる行動に反対する」と表明、挑発的行動への自制を求めた、という。
■この問題をめぐってどうも中国は北朝鮮への説得に難航し、時間のばしをしているようだ。中国は実質的に北朝鮮を「植民地化」しつつある、と「右派の論客」櫻井良子氏は週刊誌などのコラムで強調していた。中国は北朝鮮のいろいろなところに「租借地」を設定しているとのことで、これが事実なら問題である。戦前、日本を含めて欧米列強が中国に設定した租借地と、どう違うのか。
■アメリカにせよ中国にせよ、旧ソ連にせよ「大国」「強国」というのは度し難い傲慢さ、驕慢さを宿している。戦前の「大日本帝国」もそうであった。欧米崇拝、アジア人蔑視は大変なもので、庶民レベルまでそうだった。本来そういう傾向を批判しなければいけないマスメディアが煽りに煽った。その尾てい骨は今に尾を引いている。
■ところで、額賀防衛庁長官が、場合によっては北朝鮮への「先制攻撃」も視野にいれている云々の発言をしたとのこと。問題が大きくなってから、日本の憲法は戦争を禁じているので積極的に攻撃するはずはなく理解してもらえる、と話していた。微妙な情勢にある今、時の勢いに乗ったのかどうか、責任ある立場にある者として軽率な発言である。
■日本はアメリカとは違うのだということを、もっと積極的にアピールすべきだろう。戦後、もっとも数多く戦争を経験した国はアメリカである(終始周辺諸国と戦争状態にあるイスラエルがあるが)。ブッシュ政権は「先制攻撃」を実践し、イラクで泥沼状態に陥っている。日本はアジアの一員であるというのが、原点であると思うのだが。そういえばアパルトヘイトが実施されていた南アフリカ共和l国で、「有色人種」のなか唯一日本人だけが「第二白人」として白人しか立ち入れない店などにも入れた。商社マンなどそれで優越感を抱いていたようだが、情けないことである。
■こんな情勢の中、すでに隠居状態の小泉首相にかわって外交を取り仕切りテレビに出まくっているのが、安倍官房長官である。そのせいか、次期自民党総裁候補として誰がふさわしいかという世論調査で、安倍官房長官をあげる人が急増しているという。
岸信介、佐藤栄作両首相の系譜をひくこの人を、ぼくは評価できない。安倍氏は妖しげな宗教団体に相当深くのめりこんでいるというし、カルト集団である韓国の統一協会の集まりにも祝電を送ったりしている。業者との金銭癒着問題も週刊誌などで指摘されている。
敢えて名を挙げないが、宗教団体が政治にからむ構図はなんとかならないものか……。
一方、小沢民主党にとっては、安倍氏が首相になったほうが、対立軸ができ来年の参議院選挙は戦い易いそうだが。政治の面白いところである。