コラム


by katorishu
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広島・原爆の日

 8月6日(日)
■広島へ原爆が投下されて61年目の夏である。人類史上初めて原子爆弾を使用した「悪しき事件」として永遠に記憶されるべき日である。アメリカは原爆投下について「戦争を早く終わらせるため必要だった。落とさなければもっと多くの人が死んだ」としていまだに正当化しているが、これこそ「人道への罪」の最たるもので、東京裁判でも当然とりあげるべきものだった。が、戦勝国の驕りで、原爆について記事を書くことも触れることも、日本の新聞に禁じた。このことは日本人として知っておいたほうがいい。原爆の被害について、日本の新聞、雑誌が記すことをすべて禁止したのである。一方で、「言論の自由」をうたう憲法を制定させながら。
 
■負けるのがわかっていながらあくまで徹底抗戦を言い張った日本の軍部にも罪があるが、アメリカにもすこしは反省してもらいたいものだ。
 ウオルフレン氏が近著『もうひとつの鎖国・日本は世界で孤立する』で書いているが、先進国のなかでアメリカ国民ほど無知な国民はいないという。とにかく自国の文化が最高であり、ほかの文化を学ぶ必要などなく、この「素晴らし文化」を世界にひろめることが、最高の善だと思いこんでいる。

■異なった文化や異なった価値観への無知からくることである。自分に誇りをもつことは結構だが、自己の信じる価値こそ唯一絶対で、正しいというのは、典型的な原理主義の考え方である。宗教的原理主義と同じといっていいだろう。こういう国がが圧倒的に優勢な軍事力をもち、「力こそ正義」だとして、世界に君臨し、アメリカの文化・政治をひろめようとしている。
 アメリカ文化には学ぶべきものが多く、敬意を表しているのだが、自分こそが唯一絶対的な正義であるという自信や驕慢さはいただけない。アメリカ国民はもっと外国から学んでほしいものだ。超大国には黙っていても世界中から人材や情報、富が集まってくる。そのため、どうしても世界の中心と考えがちだが、世界にはいろいろと多様な価値観がある。

■他民族、他文化の国であるアメリカ人こそ、他の世界について理解があると一般に思われているが、どうやら違うようだ。もちろん、アメリカ人のすべてがそうではなく、普通のアメリカ人が極めて無知でありながら自信家であるということだ。
 そんなアメリカにべったりの日本政府。ウオルフレン氏によれば、世界もアメリカも大きく変わってきており、従来の「日米同盟」にすばる日本は大変危ない位置にあるという。
 ぼくは現代国際政治を論じる識者のなかで、ウオルフレン氏はもっとも評価できる論客である。オランダ人ジャーナリストで、以前、日本の外国特派員協会の会長をやっていた。日本とオランダに住居、仕事場をもち、日本の問題点について大変示唆に富んだ論を展開している。『日本/権力構造の謎』が日本政治に与えた影響は多大である。
 ぼくも一読して目から鱗が落ちる思いだった。以来、ウオルフレン氏の著作は邦訳されるたびにほとんど読んでいるが、鋭い指摘には納得させられる。
 ぜひ一読をおすすめしたい。『もうひとつの鎖国』は角川書店から7月31日に出たものです。定価は1500円。これを読めば10人のうち9人が世界への見方が変わると思います。
by katorishu | 2006-08-06 23:21