コラム


by katorishu
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終戦記念日にあえて『エノケン・ロッパ』

 8月15日(火)
■終戦記念日である。小泉首相が参拝したことをマスメディアは大きくとりあげている。
ま、予想通りの反響だ。全国各地にある「村の鎮守」としての神社には親しみを覚えるが、薩長藩閥政治の権力者がつくった靖国神社には興味がない。御霊が云々されているが、まるで実感がない。多くの兵隊が「靖国であおう」といって死んでいったといわれている。しかし、ホントかなという思う。一部にそういう兵隊や下士官がいたかもしれないが、多くの兵士はこんなことで死ぬのはたまらないという思いで一杯だったのではないか。
 戦死というものの、圧倒的多数の「戦死者」は餓死である。理不尽な死というしかない。「生きて虜囚の辱めをうけず」といった戦陣訓を制定した東條元首相等指導者の責任は重い。

■神楽坂で『斎藤晴彦のエノケン・ロッパ』という公演を見た。昭和のアチャラか喜劇の代表的人物である古川ロッパの、食に関する日記やエッセーの朗読と、エノケンの「モダンとコメディ」のいりまじった不思議な歌を、芸達者の斎藤晴彦が披露していた。
 古川ロッパのご長男で、演劇プロデューサーの古川清氏とお会いし挨拶をするという用件もあった。この公演の構成・演出を古川清氏が担当。古川清氏は東宝現代劇で長いことプロデューサーとして仕事をしてきた。『屋根の上のバイオリン弾き』や『ミスサイゴン』等々、誰でも知っている舞台をプロデュースし、定年後の今もフリーで演劇プロデューサーとして現役である。

■古川ロッパについて、以前から本を書きたいと思っており、まずはご長男に挨拶をしたというワケだった。以前『モダンガール』という本を書いたとき、この評伝の主人公の竹久千恵子氏が戦中の一時期「ロッパ劇団」に所属しており、そのときの話をハワイ島にある竹久千恵子氏の自宅で直接聞いた。ロッパといえば膨大な『古川ロッパの昭和日記』が有名である。日々、何をどこで食べたかが克明に記されており、読み物としても面白い。
『夢声戦争日記』などとならんで、昭和の貴重な記録である。あの時代に、こういう人物が存在したことは救われる。貪欲としかいいようのない飽くなき食に対する執着はどこからきているのだろう。
 ちなみにロッパは男爵家の出で一時、文春の『映画時代』の編集長をやっていた。

■古川ロッパといってもある年代以下の人は知らないに違いない。そのため、出版する版元があるかどうか未知数だが。戦前、戦後の食糧難の時代、時代に抗するように「食欲を全開」して生きた「インテリ・コメディアン」。今の若い人にももっと知られて良い人物である。どんな切り口が可能か。資料などはかなりそろえているので、日々すこしづつ考えをすすめてみたい。どこか奇特な版元がのってくれるかもしれない。
by katorishu | 2006-08-16 01:09