コラム


by katorishu
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お笑いハイスクール

 8月26日(土)
■北千住の駅前にある1010劇場での「お笑いハイスクール」の「開校イベント」に。日本放送作家協会主催なので、見物ではなく、手伝いに。昼の部は小沢昭一氏ほか、夜の部は永六輔氏ほかの芸人が出演。700人はいれる規模の劇場だが、昼夜ともに500人ほどの入りか。ぼくは慣れない受付などをやった。もっとも夜の部だけのお手伝いであったが。
 最後の永六輔氏の30分間の講演はきいた。皇室の入江侍従長や黒柳徹子氏などとの交流のエピソードをまじえて、笑わせながら語る話術はさすがだった。昼の部の小沢昭一氏の話も大変面白かったそうだ。このあと、毎土曜に「お笑い講座」が開催される。興味のある方は、日本放送作家協会のホームページでをクリックしてみてください。以下のURLです。http://www.hosakkyo.jp/index2.html

■電車の往復の際、たいてい本を読む。計1時間程度あるので、ぼくにとっては貴重な時間でもある。最近、鞄にいれているのは野村胡堂の銭形平次捕物控。文庫本でたまたま本棚の奥を見ていたら、二冊出てきたので、手頃な気分転換にと読み始めている。一編を30分程度で読めるので、電車の中で読むには手頃である。本日読んだのは「生き葬い」と「小便組貞女」。江戸の庶民風俗や、あの時代に生きる人たちの哀歓が素直に伝わってくる。

■江戸も爛熟期にはいると、大名や大町人ばかりでなく学者僧侶にまで妾を蓄える者が続出した。一方、妾を志願する「美女の群」もあり、中には「非常な美人で、たった一眼で雇主をすっかり夢中にさせてしまい、何百両という巨額の支度金を取って妾奉公に出た上、鴛鴦(えんおう)の衾(ふすま・つまり布団)の中で、したたかに垂れ流すという、大変な芸当をやる女もあったのです」

■つまり今様にいえば愛人を志願してその家に住み着き、ベッドで寝小便をするということである。いくら美女でも主人はそんな女には愛想がつき追い出す。しかし、一度あたえた支度金は暇をやったからといって取り戻すわけにもいかない。それをいいことに、美女の群れの一部は次々と主人を変え、その度に寝小便をして追い出され、多額の支度金をせしめるのだという。
 この短編では、「したたかな小便組の女」と見られていた女が、じつは「貞女」であったことが明らかになり、犯人の男を平次親分が敢えて捕まえず、被害者の不良は仲間うちでの争いで殺された……ということにする。人情ものの典型である。昔、銭形平次はよく読んだはずだが、今読むとあらためて江戸風俗の一端を知ることができ、面白い。 

■最近、時代小説はずっと読んでいなかったので、これを機にすこしづつ読んでみようと思っている。買いためた時代小説の本は相当数あるのだが、ほとんどは未読なので、もったいない。さらに読みたい本、見たい映画・演劇、会って話をききたい人、等々があまりに多く、1日24時間ではまったく足りない。「貧乏暇なし」というのか、「悠々自適」とは無縁の生活なので、おかげさまで退屈な時間はほとんどない。活性ホルモンが分泌されるのだろうか、たまに睡眠薬をもらいにいく以外、病院にはほとんどいかない。少々の病気は自然治癒にまかせることにしている。保険料は一方的にとられっぱなしであるが。

■癌に冒された作家の吉村昭氏は延命治療を拒否し、自ら呼吸器につながる管をひきぬき、死を選んだとのこと。妻でやはり作家の津村節子氏が「お別れ会」で披露したそうである。あっぱれな死に方である。周囲を疲労困憊に追い込み、多大の迷惑をかけ、ただひたすら醜く生を伸ばすだけの人も多いが、吉村氏の終わり方には「士」のいさぎよさがある。「商人」ばかりが多くなり「士」が本当に少なくなった。
by katorishu | 2006-08-27 01:07