コラム


by katorishu
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東南アジアでは「日本との関係が良い」が9割を超えるという

 9月3日(日)
■東南アジア諸国では、「日本との関係が良い」と見る人が9割以上に達した、とウエブ版読売新聞(9月3日)が報じた。読売新聞社と韓国日報社、ギャラップ・グループと共同で調査したもので、「日本を信頼できる」人も7―9割を占め、対日感情の良さが裏付けられた。同時に、東南アジアでの中国の好感度も増しているという。
 調査は、インド、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、韓国および日本の7か国で、6月下旬から7月中旬にかけて面接方式により実施された。インドネシアとタイでは日本との関係が「非常に」と「どちらかといえば」良いを合わせると、それぞれ96%に達したという。

■世界各国、どこでも隣国同士は仲が良くないのは当たり前なので、韓国、中国で調査したら「良い」が3割にも達しないのではないか。
 過去の問題があるし、中国、韓国ともいろいろな面で「ライバル」となってきているし、そう簡単に数字が向上するとは思えない。政治姿勢、とくに外交問題での政府の姿勢によって大きく左右されるだろうが、今後、親中国、親韓国の政権が仮に誕生したとしても、日本との関係が「良い」と答える国民が9割を超えることは、近い将来ではむずかしいだろう。

■長い歴史をもった隣国同士は、そんなものと思っていたほうがよさそうだ。一方で東南アジア諸国でこれだけ日本に対して「良い」と回答する国民がいるということは、朗報と受け取るべきだろう。
 日本をとりまく情勢は、右を見ても、左を見ても、先を見ても、悪い因子ばかりという気がする。内も外も多難な時期を迎えている。
「資源貧国」日本にとってもっとも大事なのは天然資源、とくに石油である。なるべく石油に頼らないシステムを構築し、便利さ快適さは少々捨ててでも自然と共生する以外に、日本の生き延びる方策はないと思っているが、いますぐに便利さ快適さを捨てろといっても、それに慣れきって享受するのが当然と思いこんでいる人に対しては、説得力をもたない。困ったことだと思うのだが、回転する巨大は歯車はそう簡単に止められない。危機が目前に迫らないと、だめなのでしょうね。迫ったときは遅いのですが。

■本日は秋晴れのいい天気であったようだ。午後起きだしたので、短い時間しか自然を享受できなかったが。仕事のほうが気になりつつ、また寝床で新書を半分ほど読んでしまった。『陸軍中野学校』(斎藤充功著・平凡社新書)。8月9日発売で、過日六本木にいったとき駅上のあおい書店で買った本である。新書は精読しなければ数時間で読める。知識がコンパクトに詰め込まれており流行るのはわかる。1938年創設され終戦時まで続いた諜報員養成所で「スパイ学校」などと呼ばれた。今の中野区役所のあたりにあった陸軍大学に併設されており、「中野学校」とよばれた。帝国陸軍直轄である。東京裁判でアメリカ側の証人となり「モンスター」と呼ばれた田中隆吉は2代目の校長で、兵努局長と兼任であった。

■ひところ、市川雷蔵主演で増村保造が監督した『陸軍中野学校』という作品があった。とびとびにビデオで見ただけでちゃんと見ていないが、暗く陰鬱な物語であったと記憶する。中野学校は7年間で2000人ほどの卒業生を出したが、仕事が仕事なので敗戦時、資料などもほとんどは廃棄され、卒業生も多くは黙して語らない。そのため、真相はまだ霧の中だが、著者は過去の資料などを検証すると同時に、数少ない証言者を手がかりに、資料をつみあげ実像に迫ろうとしている。今までのところ、ぼくがすでに資料などで知った情報が9割ほどで、それほど新味のあるものではないが、中野学校のことをほとんど知らない若い人などには、瞠目すべき内容かもしれない。

■学校の性格には感心しない面もあるが、情報収集の必要さは国家ばかりでなく、組織や個人にとっても極めて大事なことである。判断の基礎になるは情報である。とくに外交にはもっとも大切な要素である。
 日本にもアメリカのCIAのような諜報機関をつくること必要だ、と強調する人が近頃増えている。安倍晋三官房長官なども、恐らく日ごろから諜報機関の創設の必要性を説いている中西京大教授の示唆があってのことだと思うが、そんな類の機関をつくろうとしている。

■大事なのは「集めた情報をもとに、どう分析し、どう判断をくだすか」である。すでに情報は相当程度、政府中枢には集まっているのである。それをどう分析するか、有能な分析官がいないことのほうが問題だろう。情報の世界では常識だが、インテリジェンスの9割までは「公開された情報」によって把握できる。公開された情報を的確に読み取り、解析、分析するだけで、相手の「正体」は「やりたいこと」「やろうとしていること」はだいたいわかるとのことだ。

■的確な分析をするためには、日々の地道は資料収集と分類、分析などが大事であり、歴史や国際関係に深い造詣がなければこの仕事はつとまらない。戦前の陸軍中野学校に、どのくらい「優秀な生徒」が集まったのか、わからないが、例えば旧ソ連など、国家保安委員会(KGB)など同世代のエリート中のエリートが行くところであった。今のロシアの大統領のプーチン氏などもKGB出身である。旧ソ連のKGBは国民を監視する役割を強くもち、「警察国家」の一翼を担っており、極めて問題のある機関だった。

■外交のための情報収集を充実させるのは結構だが、あわせて国民への監視を強めることになったら、大問題である。安倍政権確実と見られており、この政権がその方向に一歩を踏み出す可能性も強いので、監視の目をゆるめないほうがいい。なにより大事なのは「言論の自由」である。これのない社会に「民主主義」はない。「美しい国」という言葉がマスコミ等でもてはやされているが、もっとも美しくない人種は、例外はあるにせよ、おしねべて「政治家」である。「美しくない政治家」が「美しい国」などというときこそ、注意して見守るべきである。
by katorishu | 2006-09-04 00:27