コラム


by katorishu
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敬老の日・5人に1人が65歳以上 

 9月18日(月)
■敬老の日というので、総務省は今月15日現在の「高齢者推計人口」を発表した。それによると、65歳以上の高齢者は昨年から83万人増えて2640万人(男性1120万人、女性1520万人)であるという。推計総人口が2万人減る中、高齢者が占める割合は0,7ポイント上昇して過去最高の20,7%に達した。

■本日、午後、北品川の広いコーヒー店にはいったが、確かに「高齢者」を思われるお客が多い。働いている人もいるが、年金暮らしで暇をもてあましている人も多いに違いない。「死ぬまで仕事」「仕事ができなくなったら生きている甲斐がない」とぼくは思っているので、年金で「遊んで暮らして」いる人には距離を覚えている。病気等で働けない人は仕方がないが、健康なうちは年相応の仕事をし「社会還元」をするのが、まっとうな生き方ではないかと思っている。

■賃金を得る「仕事」でなくとも、ボランティア活動などいろいろと社会に還元することがあると思うし、そういうことをしている人のほうが、生き生きしているようだ。「ジコチュウ」人間が近年増殖しており、「自分だけよければいい」という人が若い人だけではなく中高年にも増えている。ある意味でみんなで御神輿をかついでいるようなものなので、自分が御神輿の上にのれば本人は楽かもしれないが、その分、担ぎ手に負担がいくのだということを、頭の片隅にいれておいて欲しいものだ。

■今後数十年の一時的な現象だと思うが、人口のアンバランスな構成によって高齢者が
急増し、その多くが年金等をもらって暮らすとなると、年金も早晩破綻するだろう。働いて賃金を得れば、そこから税も払うことになり、財政赤字の削減にも貢献することになる。なにしろ2000万を超える人数である、一人一人の払うお金は少額でも総計すると莫大なものになる。

■人間何が幸いするかわからないものである。厚生年金や企業年金、株の配当などで結構、裕福な老人がいる一方で、5,6万の国民年金に頼らざるを得ない多くの高齢者もいる。後者の側の人はそれだけでは食べていけないので、働くことになる。高齢者で若いときと同じ労働をするのは辛いが、年齢にあった仕事であったら、心身の健康にプラスになることも多い。

■ぼくの子供のころ、ホワイトカラーといわれたサラリーマンは少数派であった。家族構成が今と違い自営業者や農業等の従事者も多かったから、老人なりの仕事や作業がいろいろとあった。当時、大人がこんな話をしていた。「サラリーマンは定年になると、やることがないから早死にする」。いわれてみれば、近くに住む元銀行員は定年になると、ほどなく脳溢血かなにかで死んでしまった。そういえば、あの家のオジサンも、こっちのいえのオジサンも、やることがなくてボーッとしていて、早死にした……ということが、語られていた。

■昔と違って、今の民間企業等はストレスが過剰であり、定年になって「やっと苦役から解放された」と思うのかもしれないが。昔の職人は年金などないし、仕事が生活そのものになっているので、別に苦役とも思わなかったようだ。疲れることはあっても、長年その仕事をしてきた職人で、嫌々やっていた職人は極めて例外であった。みんな仕事が好きだったのである。植木職人や大工、桶作り職人等々、それぞれの作業に創意工夫があったし誇りももっていた。そうして、何より仕事をすることで人に感謝をされた。それが生き甲斐になっていたのである。
 サラリーマンだと、なかなかそういう心境になれないのかもしれない。今でも役者や音楽家、文筆家などは、仕事が出来る限り続けようとしている。もっとも仕事がこなくなり、結果として「遊んでいる」ことになるケースも多いのだが。

■高齢者が生き生きした老後をすごせるような仕組みが、今の日本には少なすぎる。周囲を見回しても、ただ日々を遊んで暮らしたいと思っている老人は少数派である。多くの老人は仕事やボランティア活動、趣味などを通じて社会とのつながりを維持したいと思っているのに、その機会も舞台もない。生活の必要から働きたいと思っている元気な老人も数多いのだが、「働く場」が圧倒的に少ないのである。

■アメリカの文化的植民状態が長く続いた結果「若ければ価値がある」という文化が日本全体をエーテルのようにおおっている。「長幼の序」は失われ、年寄りは排除される傾向にある。最近のインターネットなど新しい技術、メディアの急速な普及についていけない老人も多く、結果として「置き去り」にされてしまうのかもしれないが。
 老人に活動の場をあたえるには、政治や行政が力を発揮するしかない。「遊んでいる老人」が急増し、「働く若者」が減少する社会はいずれ崩壊する。子供でもわかる「算術」である。
by katorishu | 2006-09-19 00:04