コラム


by katorishu
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文化の劣化を食い止めるには読書

 9月26日(火)
■一日中、かなり強い雨が降り続いた。水に弱い携帯パソコンを持ち歩かなくてよかった。15時と18時に、いずれもテレビ関係者とあう約束があり、移動するためちょっと歩いただけで、鞄にいれた新聞などがぬれていた。番組企画の件などで話し合う。テレビに関しては、ぼくの書くような枠がきわめて限られているので、企画を通すこと自体がかなりむずかしい。

■以前、ぼくが書いたノンフィクションをもとにした企画で「とっても面白い」と制作会社代表はいってくれたが、スペシャル枠でしかできない内容なので、果たしてこれを採用するところがあるかどうか。長年、下請けの番組会社で仕事をしてきてベテラン制作者たちの「悩み」「いらだち」を酒を飲みつつきく。長年、仕事をやってきた人たちの大半の関係者は現状を憂えている。

■日本の文化の程度がこの10年ほどで低下し、そのことを自覚していない人も多い。一応「民主的手続き」に基づいて選ばれる政治家と、数字を唯一の尺度にして制作されるテレビ番組に、如実に反映されているようだ。
「学歴」がある人は増えているが「学力」がともなっていない。とくに物事を深く考えたり、いろいろな角度から見ていくことができず、短慮に結論を出すひとが多いという気がする。
 最大の理由は、本を読まないからである。骨のある本をじっくり読む習慣をもっていない人が圧倒的に多い。反論はあるだろうが、ぼくは深く憂えている。

■テレビやインターネットで「雑多な知識」が手っ取り早くはいってくるので、多くの人は「物知り」になっていると思っている。しかし、断片的な知識をいくらつめこんでも、思考力を強くすることはできない。断片的な情報を整理し、抽出し、そこから意味を見いだす作業が大事なのだが。
 それができないので、テレビのクイズ番組にすぐ返答する人のような人間が増えていく。こういう人が圧倒的に多くなると、ポピュリズムの弊害が増す。「自分はものを知らないので、人の話を謙虚に聞く」という人が以前は多かった。ところが、簡単に細切れの「情報」が手にはいるので、「自分はものを知っている」と思っている「半可通」が多くなっている。

■マスコミ関係者にもこのタイプが多くなっているのは、特に憂慮すべきことだ。
 そんなことをふくめて、「心ある」放送関係者といろいろ話し合った。「なんとかしなければ」とみんな思っているのだが――。流れを食い止めることは、なかなかむずかしい。
 安倍新内閣が成立したものの、顔ぶれから見てあまり期待できそうにない。小学校では「学級崩壊」といった現象が起きているそうだ。これに「脳内汚染」がくわわると、ますます社会性のない人間や、深くものを考えられない人間、短絡的にものを考える人間が増え、モラルは低下し、文化の程度もどんどん落ちていく。「美しい国」にするなどと新政権はいっているが、何をもって「美しい」か。中身を吟味しなくてはいけない。
by katorishu | 2006-09-27 10:24