コラム


by katorishu
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日本文化の精髄は日本語

 10月3日(火)
■仕事の合間に久々に大井町まで歩きブックオフで5冊ほど本を買う。525円。安く買えるのはいいのだが、苦労して本を書く側からすると、あまり歓迎すべきことでもない。価値のある本もない本も一緒くたに、見た目にきれいな本を優先的に購入し、いわば寄生虫のようになって商売をし、業績をのばしていく企業。ここ10年ほどでこの種のビジネスが急成長をとげている。地味にこつこと仕事をしている人を踏み台にして成り立っている、といってもいい。もちろん、良い点もあるのだが、この傾向が助長されることは、文化の衰亡につながりかねない。現実に汗をながして物と作る(創る)ひとが不遇で、その上前をかすめとる人が繁栄するというのは、まともな姿ではない。

■文化の根底にあるのは言葉である。日本語。これを大事にしてもらいたいものだ。政治家がやたらに横文字をならべてしゃべるようになった。「美しい国」を構築しようとスローガンをかかげている新首相であったら、まず「美しい日本語」を使ってもらいたいものだ。石原都知事なども頻繁に横文字をならべる。国歌や国旗などにこだわり、日本の伝統文化を云々するなら、伝統的な日本語で語るようにしてもらいたいものだ。

■横文字でなければニュアンスが出ないこともあるが、ちゃんとした日本語があるのに、英語のほうが格好いいと思うのかどうか、こちらを頻繁に使う人を、あまり信用したくない。コマーシャルなどを見ていても横文字の氾濫で、ここはいったいどこの国かと思われることも多い。ボーダレス化が進むなか、よその国の言葉がはいってくることは当然で、適宜とりいれて日本語の表現を豊にするのなら結構なのだが、英語にもなっていない「ジャパニーズ・イングリッシュ」が過剰すぎる。欧米文化を過剰に崇拝している国民が多い中、英語の読み書きや英会話ができない人もまた多い。

■ぼくにいわせれば、英語が下手というので、救われている面がある。英語を自在にあやるれる日本人が多くなれば、いっそ英語を国語にしようなどという人も出てくるに違いない。知る人ぞ知るだが、太平洋戦争の直後、文学の神様といわれた志賀直哉が日本語をやめてフランス語を国語にしようと提唱したりした。一次はローマ字表記にしようなどと、真剣に討議された。

■伝統のある「国語」をもたない民族は悲しい。第二次大戦中、フィリピンは日本軍に占領され軍政をしかれていたが、フィリピン憲法をつくろうということになったとき、在来のタガログ語では語彙が少なく抽象的な表現や法律用語などが出来ないので、確かフランス語で表記したはず。英語は「敵性語」なので日本軍が許さなかった。
 『マッカーサーを探した男』というノンフィクションを書いたりしたので、こういう雑多な知識を知っているのだが。日本文化の精髄はなにより「日本語」の中にあるのだということは、日本人として頭の片隅いれておいて欲しいものだ。
by katorishu | 2006-10-03 23:07