コラム


by katorishu
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

北朝鮮の地下核実験に関する、2本のテレビ番組

 10月13日(金)
■NHKスペシャル「北朝鮮の核実験」を頭からじっくり見た。最近、テレビをちゃんと見ることがないので、珍しいことだった。以前はテレビをつけっぱなしで仕事をしていたが、集中力の邪魔になるので、やめている。もっとも外のコーヒー店などもうるさいのだが、不思議とこちらは邪魔にならない。長年禄をはんできたテレビに対して「愛憎」いりまじった複雑微妙な感情が潜在心理にあるのかもしれない。

■NHKスペシャルだが、今度の核実験をわかりやすく解説し、52分の番組としてはこれが限度かなと思った。国谷裕子氏がキャスターなので「クローズアップ現代」の拡大判のようだった。金正日の元側近で韓国に亡命したファン・ジョプ氏の言葉は重い。体制維持のため、金体制はずいぶん前から核兵器をもつことを至上課題にしてきており、少々の圧力では、決して核兵器開発をやめないだろうとのことだ。
 じつに困った国である。過剰に軍事費に資金を投入する一方で、きわめて非効率な経済体制のもと、すでに経済は崩壊し、覚醒剤の密輸や偽ドルつくり、それに外国からの援助によってしか国を維持できていない。どう考えてもまともな体制ではない。

■さらに1時間ほどの時間があれば総連系や中国、韓国の専門家などもだし、北の主張をもりこみ、それに対する反論、さらにそれへの反論と、対立点を浮き彫りにできるのだろうが。この問題は大変重要なので、あと1時間ほどつかって問題点を掘り下げてほしかった。

■そのあと朝日ニュースレターの「ニュースの深層」を見た。こちらはラジオプレスの理事で北朝鮮問題専門家の鈴木典之氏に、週間ダイヤモンド誌の前編集長が1時間かけてインタビューをしていた。一人の人にじっくり話をきく利点が十分でている番組だった。真相を知れば知るほど、この問題の解決はむずかしいとあらためて思った。鍵をにぎっているのは中国だが、朝鮮戦争で北とともにアメリカと戦ったという「トラウマ」があるので、中国としてもアメリカの存在を強く意識しつつ対処に苦慮しているようだ。唯一の被爆国の日本はなんとか知恵をしぼって、独裁体制を軟着陸にもっていくよう努力してほしいものだ。
 ところでラジオプレスとは北朝鮮や中国、ロシアなどの放送を中心に24時間体制でモニターし、ちょっとした言葉や解説の変化から政府は社会の変化をさぐっていくことを専門に行っている「情報収集組織」のひとつである。

■北朝鮮の独裁政権ができるだけ早く崩壊するのが望ましいが、では崩壊したあと朝鮮半島はどうなるのか。2200万の人口をかかえ経済的に疲弊している北朝鮮の体制が崩壊すれば、膨大な難民が生じ大混乱におちいり、とても韓国一国でささえきれるものではない。早晩、今の体制は崩壊するとして、そのあと、直接の影響を受ける韓国はじめ日本や中国、ロシアなどの周辺国が、どう対処していくべきか。しっかりしたシミュレーションをし、5年、10年後を見据えて戦略を練っていく必要がある。しかし、今のところ具体策について、どうも関係国はあまり深く考えていないようだ。
 経済的にもっとも力のある日本が率先して考えていくことだと思うのだが、政府は目先の危機への対応で精一杯のようで、ほとんど何もやっていない。長期的に見て、金体制崩壊後の朝鮮半島をどうしていくか。真剣に考え対策をたてておかないと、戦争被害に匹敵するほどのマイナスの事態に直面するに違いない。
by katorishu | 2006-10-14 01:58