コラム


by katorishu
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タイタニック号の上でポーカーゲームをやっているようなもの

 10月14日(土)
■環境省が13日、発表した05年度の大気汚染状況によると、光化学スモッグの原因となり、のどの痛みなどを引き起こす光化学オキシダント(Ox)濃度の年平均値が0.047ppmで3年連続上昇したという。全国1184カ所の観測地点のうち環境基準(0.06ppm以下)を達成したのは3カ所だけで、悪化が目立っているとのこと。

■地球規模で環境汚染は進んでおり、国土の多くが山岳地帯で環境が比較的保たれている日本でさえ、この状況である。隣国中国の環境汚染は深刻で、とくに水が枯渇してきている。食料生産にも打撃をあたえるし、いずれ多くの国民が水飢饉に苦しむのではないか。
 14億に近い大人口をかかえる中国が、今の日本人のような生活をしはじめると――どういうことになるか、記す必要もないだろう。アメリカ主導の大量生産、大量消費のシステムを見直し、リサイクル社会にもっていくことが、今こそ必要な時代はない。

■心ある科学者は早くから警告を発しているのだが、ビジネスの世界では恐ろしく無頓着である。ビジネスでは生き残りをかけて熾烈な競争が展開されており、環境汚染に配慮する余裕のある企業はごくわずかである。みんなが懸命に努力して物的に「豊か」な、アメリカ的社会を目指せば目指すほど、人類の破滅が近くなるという大変皮肉な時代を、われわれは生きているのである。

■天然資源を大量に消費するツールの最たるものは自動車である。日本は自動車産業がおもな牽引力になって「世界第二の経済大国」になったので、マスコミはもちろん、研究者なども車の害についてあまり声をあげない。
 仕事で車をつかう分はまだ許せるとして、少なくとも都会では自家用車は必要がない。ぼく自身体験していることだが、なくても不便をまったく感じない。土日だけ乗るのであったら、レンタカーかシェアして何人かで一台の車を使用することも真剣に考えてもらいたいものだ。一挙に現在のシステムを変えることは無理としても、少なくとも教育の場などで車をはじめとして大量のエネルギーを消費する利器について、抑制しないと大変なことになると教えて欲しいものだ。

■アメリカで4万人が車の事故で死んでいる。日本でも7,8000人が死んでいる。ひところ、1万5000人もの死者がでていたので改善されたように思われるが、負傷者はずっと増えているとのことだ。シートベルトやエアクッションの採用で死者は減っているものの、車の事故事態は決して減っていない。

■国土の広いアメリカで車が必需品というものわかるが、国土の狭い日本で真似ることはない。日本は、鉄道など公共機関がかなり発達していたのだが、車の普及によって乗客が減ったため、採算のとれない鉄道が増え、結果として廃線になってしまった。しかし、環境汚染を深刻に受け止めて車に乗ったりする人が減れば、鉄道やバスに乗る人も増え、採算がとれるようになる。
 この数年、アメリカでも公共交通機関が見直されてきており、これ以上石油を消費することに歯止めをかけようとする動きが出ている。あのブッシュ大統領でさえ、いつぞやの演説で石油にばかり頼るのはやめようなどと演説したほどだ。

■何年か前、アメリカのペンタゴンが地球温暖化について警告する文書を発表していた。このまま石油消費がつづくと、温暖化によって海流の流れがかわり、たとえばヨーロッパはシベリア並も寒冷の地になってしまうという。一方、日本などは熱帯となり、永久凍土の氷がとけ海面があがり、陸地の1,2割が水没する。まだまだ人口は増え続けることを考慮すると恐ろしい時代が間近に迫っている。
 何度か記しているが、いまの日本、いや世界は「タイタニック号の上でポーカーゲームをやっている」ようなものである。早く舵を切らないと取り返しのつかないことになるのだが――。
by katorishu | 2006-10-15 00:05