コラム


by katorishu
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

世界史を受験科目じゃないからはずすという愚

 10月24日(火)
■富山県の県立高岡南高校で、3年生の生徒百数10人が世界史の科目を履修していないので、このままでは卒業できない、といったニュースがあった。学校の授業を受験向きにシフトし、受験科目だけ生徒に履修させるという姑息な手段を学校側がとった結果らしい。
 今の時代こそ、世界のいろいろな国の歴史や国際関係についての基礎的情報が重要なときはないのに、愚かしいことだ。「受験」ということで大事なことがないがしろにされていく。
 教育現場の混迷を象徴する出来事である。目の前の「利益」を追うことに大半のエネルギーをさき、大局を見たり長い時間でものや人を見ない風潮の延長にあるといってよいだろう。

■「学歴社会」もまだ強固に残っているようだ。「学力」と「学歴」は必ずしも比例しないのに、「歴」ばかりが先行する。卒業後何十年たっても「××大卒」を誇示する人がいるが、これも愚かしい。×大卒で、××省の「エリート官僚」、あるいは旧財閥系の××物産、××テレビ局……等々、その名をいえば「いいところにお勤めですね」といった言葉が返ってくる組織に、単にいる(いた)だけでは、どうということもない。(給料がよく、少々の贅沢はできるかもしれないが)

■座り心地の良い「地位」に安住し、ゴルフや接待等で明け暮れて勉強をしなければ、どんな優秀な人間でも、15年くらいで駄目になる。人間関係術だけは巧妙になるかもしれないが。それも仲間うちだけで、世界には通用しない。

■とくに「歴史」についての基礎的知識を欠いている人が指導層にも多い。歴史についての知識が乏しいから、もちろん哲学もないし、文化もない。要するに「教養」がなさすぎる。(ぼくがあるといっているわけではありません。ないから、未だに研鑽をつもうと努力はしていますが、気分は未だに一介の書生です)

■もちろん、知識欲旺盛で文化・芸術面の素養も豊かで、さらに情のある人もリーダー層にいないこともないが、きわめて少ない。教養のない人間は、テレビ等で見るとすぐわかる。知性や心映えは顔にでるものである。声にもでる。芸能面を除外していっているのだが、世襲の坊ちゃん顔か、出世欲・名誉欲のかたまりの成り上がりか、金儲けのうまい下品な顔――。それでテレビにでる人の7,8割をしめてしまう。

■以前のテレビには博覧強記で好奇心旺盛な山本嘉次郎監督や、独特の話芸で人間通の徳川無声のような通人が出ていたのですが、最近はそういう通人、粋な人は見ませんね。なによりもユーモアがありました。今のテレビはギャグばかりだ、と先月関西でお会いした作家の藤本義一さんが話していました。「テレビは終わったね」といわれた藤本氏の言葉が強く記憶に残っています。
by katorishu | 2006-10-25 01:07