コラム


by katorishu
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2人に1人が肥満と感じているとは

10月28日(土)
■最近、町でよく太った人を見かける。この10年ほどで急増したという気がする。車社会と「便利さ追求社会」、それに食べ物の氾濫がもたらした「社会現象」である。
 内閣府が28日、発表した「体力・スポーツに関する世論調査」によると、「運動不足を感じる」人は67・6%(前回比1・4ポイント増)、自らを「肥満と感じる」人は43・4%(同2・8ポイント増)で、いずれも1991年にこの項目の調査を始めて以来、最高となったという。

■2人に1人が肥満と感じているとは驚きである。運動不足というより、食べ過ぎが大きな原因ではないかと思う。沖縄は以前から男女とも日本一の長寿県であったのだが、ひところから男子については長寿のトップの座からおちて、今は中くらいであるという。原因はアメリカ的な食事をとり酒類を多く飲むことなどから肥満が急増したことであるとのこと。

■どこの居酒屋にはいっても、食堂、レストランの類でも、とにかく肉類、それも揚げたものが多く、根菜、野菜類はほんのわずかである。スーパーの食材売り場でも唐揚げなど高カロリーの食べ物が圧倒的に多い。若い人を中心にそんな食べ物への嗜好に傾斜しているようだ。ハンバーガーショップはにぎわっているし、今後、肥満はさらに増え、成人病も急増し、どこを見ても病人だらけ――といった光景が生まれるに違いない。

■テレビのコマーシャルばかりでなく番組でも、飲食料関連がじつに多い。朝から晩まで毎日、こうも「食欲」を刺激されつづけたら、よほど意志堅固な人でない限り、誘惑に負けてしまうかもしれない。アルコールのテレビコマーシャルが日本のように氾濫している国も、ほかにない。アメリカではアルコール類のテレビコマーシャルは、タバコのコマーシャルなどとともに禁止か制限されているはずだ。

■日本だけが、無原則に多くの人々の本能をあおりにあおって、それで企業が儲けている。社会や国民の多くの役に立つことなら結構なのだが、食欲を異常にあおるのは、性欲を異常にあおることと同じである。最近、ケーブルテレビで動物ものの海外番組をよく見るが、動物にとって「食欲」と「性欲」は基本的な本能で、等価であり、種族保存の本能から、このふたつの欲望の充足のため命をすりへらす。
 ところで人間も動物の一種であり、哺乳類のメカニズムから自由になれない。人とチンパンジーの遺伝子の99,9パーセントは同じであるという。

■チンパンジーも含め、ほかのあらゆる動物は「足るを知っている」が、唯一、人間だけが足るを知らず、どん欲に欲望を過剰に満たそうとする。そうして欲望のより強い「勝ち組」が自分たちの都合のよい仕組みをつくり、法律という名のもとに、自分たちの欲望をより多く満たすことを「正しい」として、世間に広める。
 江戸時代、多くの日本人は貧しかったが、足るを知っていた。理想的なリサイクル社会でもあった。もちろん身分制度など欠点もいろいろとあったが、江戸から真摯に学ぶべきものがあるのではないか。

■自慢するわけではないが、ぼくは現在、20歳のころの体重をまったくかわらない。体質もあるのだろうが、なるべく「昔の日本人」が食べていたものを食べるようにしている。欧米人が食べるような肉類は、基本的に食べないことにしている。そうして「腹八分目」。その結果なのだろう、たまに睡眠薬をもらいに近くのクリニックにいく以外、「病気知らず」で、健康保険は支払い超過である。(自慢になってしまいますね)

■知り合いに太った人がいるが、中高年になると、ほとんどの肥満者はなんらかの病気をかかえ、食事のたびに薬などを飲んでいる。食通が糖尿病になり、食べたいもの、飲みたいものを飲めなくなったら、本末転倒で、笑い話である。
 同じ本能でも性欲にブレーキをかけないと指弾されるが、食欲にはブレーキをかけなくても指弾されない。ぼくにいわせれば、おかしなことである。人口過剰で、天然資源の枯渇がいわれている社会である。食欲と性欲という2大本能にブレーキをかけることが「美徳」というシステムをつくりださないと、自分で自分の首をしめることになりますよ。
by katorishu | 2006-10-29 01:46