コラム


by katorishu
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週間朝日までが北朝鮮の「暴発・開戦」の危機の記事

 10月30日(月)
■本日発売の「週間朝日」におやっと思われる特集が載っていた。『金正日の「精神分析」』と『第2回核実験は年内に、そして軍が暴発し開戦へ』という特集である。これまでこの種の特集を掲載するのは出版社系の「週間文春」や「週間新潮」「週間現代」などであったのだが、新聞社系の週刊誌がここまで踏み込んだ報道をするのは珍しい。

■前者は、韓国の情報機関が入手した極秘調査文書の中味で、報告書が作成されたのは1999年5月であるという。驚くべき内容である。詳しいことは週刊誌を読んでいただきたいが、例えば金正日は自分の悪い学業成績を消し去るため、自分が卒業した南山高級中学を破壊してしまったという。孤独で映画に没頭し、なんと「007」映画が現実と錯覚しているとの証言も。さらに恐怖による政治スタイルは「ナチスのコピー」であり、ヒトラーと違うところは「世界征服の野望がない」こと。女性については父の金日成と同じく慰みものとみている……云々。

■こういう金総書記の精神分析をすると、思考障害ではないが、相当な水準のパラノイアの性格構造をもっているという。週間朝日の次号でも触れるそうだが、なるほどと思わせる。21世紀の今、まだこういう人間が独裁権力を振るう国家が東アジアに存在するのである。
 後者の特集では、北朝鮮が国際的な孤立化を深めるなか、軍が暴発し、開戦になる危険を指摘している。すでに金正日は軍の支配下にあり、軍部も食糧難でこの冬をこせない。そのため暴発する可能性が強いとのこと。北朝鮮政府が強硬路線を貫く背景には、そうしないと軍の不満をおさえきれず金総書記暗殺すら起こりかねない事情があるのだという。北朝鮮は経済危機を回避するため開放路線で成功した中国の意見をいれ、一部改革開放政策をとりいれたのだが、この過程で軍の流通利権を撤廃した。そのため軍の不満が高まり危険水域に近づいているのだという。

■すでに北は日韓にミサイルを撃ち込む体勢にあり、日本国内には「ふくろう部隊」という破壊工作などの特殊工作を担う人間が潜伏している、といった公安幹部の説明も載っている。出版社系の週刊誌でなく朝日新聞発行の週刊誌が掲載しているところが、興味をひく。今号では、中国のチベットでの弾圧政策の記事も載せている。右系の論断から『朝日は媚中』であるとして、中国に甘い……といわれてきたなか、週間朝日の今週号の特集は注目に値する。それだけ北の「現実的脅威」が迫っていることの証左であるのかもしれない。

■いずれにしても、金総書記独裁体制の崩壊は近い。本日の報道ステーションによると、北朝鮮内の反体制運動について触れていた。毎月、反体制運動関係者が処刑されているというが、食糧難から餓死の恐怖をかかえた国民の不満のエネルギーはたまりにたまっていると見るべきだろう。
 北朝鮮の幹部は、現在の「鎖国状態」でとりあえず「食べられる人間」が生き残り、「成分の悪い」何百万の人間は餓死してもかまわない……と思っているようだ。こういうとんでもない政権には一日も早く退陣してもらいたいものだ。
 ただ、どういう形で政権が崩壊するか。予断を許さない。ルーマニアのチャウシェスク政権のような倒れ方をしてくれればいいのだが、北朝鮮と東欧とは違う。相当の混乱は、日本人も覚悟しておくべきだろう。

■金政権は外部からの「脅威」をあおることによって維持されており、従って外部からの脅威をなくす――具体的にはアメリカが「政権保証」をすれば、内部を引き締める要になっている「体勢転覆の危機」がなくなるので金体勢は内部から崩壊する……という意見がある。その方法で崩壊すればいいのだが……。

■どうも、年内に波乱が生じる恐れが強い。厳冬期をむかえ、餓死するものが急増すれば、軍のなかの人間も動く。外への暴発も十分ありうることだ。とにかく、多くの国民が「食えない」というのは変化の最大要因である。
 しばらくは北朝鮮と隣国の動きから目を離せない。明るいニュースは内外ともに少なく、「厭な時代」が刻一刻と迫ってきているようだ。依然として「タイタニック号の上でポーカー・ゲームをやっている」状態は変わらない。霧の向こうにあるものには「目をつぶれば確かに見えない」のだが。
by katorishu | 2006-10-31 01:56