コラム


by katorishu
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「ちょっといい話」が浮かばない 

11月5日(日)
■たまには「ちょっといい話」でも記そうと思うのだが、残念ながら思い当たらない。もしかして、こちらの感情が鈍磨しているのかもしれないが。あるいは、世の中について、幻想を抱けなくなっているからかもしれない。インターネットなどメディアの発達によって、「未知のこと」があまりに少なくなってしまい、いわば「情報すれっからし」になっていることも一因だろう。

■ぼくに限らず、昨今、感動の鈍磨を覚えている人は多いと思う。以前は、映画や小説、そうして異性などが、熱くなれる対象として存在していたのだが。職業柄、映画や演劇を見、小説やノンフィクションを読むが、「仕事」でもあるので、つねに批判的に見たりするので、熱くなることはあまりない。
 ぼくに限ったことではなく、時代なのかもしれない。街を歩いていても、電車に乗っていても、目がきらきら輝いている人は少なく、ほとんどの人は「鮮度の落ちた魚」のような目をしている。

■最近、いわゆる「年金生活者」と身近に接することがないのでよくわからないが、彼らはありあまった時間をどう使っているのだろう。過日、ある集まりで久しぶりにお会いしたS氏は去年、定年退職したとのことで、「これからが、自分の人生だ」と話していた。サラリーマン人生は定年後の「自由な人生」のための備えの期間であったとのこと。年金と少々の蓄えもあるので、生活は保障される。子供たちも独り立ちしたし、あと何年生きられるかわからないが、目標をいくつかかかげて自己実現をしてゆきたい、と目を輝かせていた。「第二の新しい人生」だから、これまでサラリーマンとして仕事でつきあいのあった人とは、基本的に切れたところで生活をしたいということだ。定年のないぼくなどには、実感としてわかりかねることだ。

■S氏には悔いのない人生をまっとうして欲しいものだが、10年、15年先の日本がどうなっているか、誰も予見できない。今のような社会が続いているかどうか、怪しいとぼくは思っている。年金など、社会の仕組みがかわったりインフレになったら、たちどころに破綻する。この10数年、ずっとデフレ傾向が続いているので、「団塊の世代」より前の「年金生活者」にとっては、ある意味で「恵まれていた」時代だった。

■しかし、これからは、どうなのか。「少子高齢化」「環境汚染」も、問題だし、国際情勢、国際経済の変化なども、人々の生活に深刻な影響をおよぼすだろう。次代を担う若者の覇気のなさも、不安材料である。東アジア情勢だって、どう転ぶかわからない。東京周辺を大地震が早晩見舞うだろう。「そのときは、そのとき」くらいの気分で、その日その日を精一杯の努力で生きるしかない。野生動物は普通にやっていることである。彼らの生きる環境は年々厳しくなっているが、人間社会にしても同じことである。

■人類という種が繁栄しすぎたのが最大の理由である。とにかく、地上に人が多すぎる。かといって、人工的に減少させることもできない。繁栄「しすぎた」種は、必ず滅びる。地球の長い歴史から見ると、それこそ自然の流れである。
 あれやこれや考えると、「ちょっといい話」がでてこない。日々をワクワクした気分で生きている人に、ほとんどお目にかからないので、そんな風に感じてしまう。21世紀は「無感動」の世紀なのかもしれない。せめて創作の世界で、感動を創りだしたいと思いシコシコ書いて(書こうとして)いるのだが。
by katorishu | 2006-11-05 23:25