コラム


by katorishu
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おごれる者ひさしからず

 11月8日(水)
■「おごれるもの久しからず」という言葉がある。いつの時代でも生きている言葉で、これが死語になってしまったら、多くの人はすくわれない。アメリカ中間選挙は世論調査の結果通り、ブッシュ政権への厳しい批判となり、下院では共和党は過半数われになり、上院でも劣勢にたっているということだ。上院でも民主党が多数派となると、ブッシュ政権は「レイムダック」化する。「おごれるもの」もついに最後のときが近づいたかと思い、とりあえずホッとした。

■アメリカには民主主義が正常に機能している証拠でもある。ひるがえって日本はどうなのか。短い時期、政権交代があったものの、相変わらず「一党」が政権に座り続けている。「権力は必ず腐敗する」のが歴史上の「真理」になっていることから考えると、異常事態が続いているということである。
「55年体制」のような自民か社会党かという選択では、政権交代はむずかしかったが、現在、民主党という政権をとりうる野党ができてきた。民主にも数々の問題があるにしても、ひとつの勢力が権力をにぎり続けることの弊害が目に余る状態になっている現在、政権交代による浄化作用に期待するしかない。この点で、アメリカを見習って欲しいものだ。

■戦後、日本はアメリカという盟主の御機嫌をうかがいながら生きてきた。おかげで、「奇蹟の経済成長」を経験し、現在の物的繁栄がある。「物的繁栄」にも、ぼくは留保をつけたいが、多くの国民は、今の「繁栄」をひきつづき願っているのだろう。だとしたら、なおのこと、貧富の差が一層開く政策を継続する政権を見限らないといけない。今のままの政策が続くと、さらにモラルは荒廃し、格差も増大し、結局は社会が不安定化し、大変住みにくい社会になる可能性が強い。

■21世紀のキーワードは「共生」である。すくなくなった資源(富)を、ひとりじめするのではなく、わけあって生きる。むずかしい問題であるが、その方向にむかわなければ、世界から紛争が絶えず、いずれ不満分子に核兵器などがわたり、大惨事に見舞われるだろう。世界的に反米の波がひろがっていることも気になることだ。

■さらに「反知」の動きも憂うべきことだ。知的なもの、理性的なものに対する軽視。今の日本にもこれが広く深くひろがっている。品性の欠如、モラルの欠如の基盤には、これがある。
 漫画しか読まない人が外務大臣になっている国である。「反知」もきわまれりである。
 テレビに長くかかわった者として率直に感じていることだが、「反知」とそれにともなう品性の欠如、モラルの欠如をもたらした「戦犯」のひとつはテレビである。物心ついたときからシャワーのように照射される映像の中で育った子供の脳が、劣化するのは自然の理である。

■この面から警告を発している脳科学者が何人もいるが、そういう人は竹中平蔵氏のように政権の中枢にはいることもなく、テレビにも出ないので、多くの国民に声が届かない。近頃はテレビが政治をも左右しはじめた。ファッションから価値観、美意識、生き方――などなど、テレビの影響はとどまることを知らないようだ。テレビを長時間見る層ほど、本を読まないことも問題である。ひところ、外国から日本を訪れた人が一様に驚いたことがあった。なんだと思いますか?

■電車のなかで多くの日本人が本を読んでいることでした。諸外国に例を見ないような読書家がそろっている。じつは、これが戦後の高度成長を支えてきた原動力になっているのです。
 もちろん本を読まなくとも仕事を通じて自分を厳しく律することで、ある境地に達する職人気質もいました。今は、そんな職人気質の人間もほとんど絶えてしまった。
 で、本屋で売れる本といえば、お手軽なマニュアル本やハウツー本、ビジネス本ばかり。こういうのをいくら読んでも、「読書」をしたことにはなりません。

■現在、電車の中で目につくこととえいば、携帯である。携帯のキーをしこしこ押している。指の運動にはなるかもしれないが、携帯で読む情報など、細切れ情報でしかない。
 繰り返しますが、細切れ情報をいくら読んでも「読書」をしたことになりません。「読む」ということは「考える」ことである。堅い本を読めば読むほど「深く考える」ことになるのだが、考えること自体を厭うのだろうか。歩くことを厭う人間はやがて足が退歩する。考えることを厭う人間は脳が退化する。これが自然の掟というものです。
 ※ところで、最近、このブログにしばしばエロサイトがトラックバッグされます。自動的に組み込まれるようです。目障りです。この撃退法をどなたか知りませんか。
 
by katorishu | 2006-11-09 01:20