人の脳はイメージに極度に弱い
2006年 11月 10日
■不幸なことに、大人の自殺はそれほど珍しいことではないが、最近、よく子供の自殺が報じられる。本日も、北九州市小倉北区の市立中学校で少女が飛び降り自殺をした。少女は17歳ので同校の卒業生で無職だという。17歳はもう子供ではないが、年齢の8掛けが、現在の「社会的年齢」だと思うので、これは子供の自殺といっていいかと思う。
■理由はよくわからないが、子供の自殺がマスコミ等で大きく報道されることも、自殺者を増やす結果になっている。イジメの問題もそうで、イジメが「社会現象」として大きく報じられるので、付和雷同しがちの人がイジメに走る傾向がいっそう助長される。
「そうか、みんなやっているんだ」という一種の安心感が心のどこかにあるのだと思う。自殺にしても、自分だけではなく、多くの「同じ人」がいるということが、逆説的ながら「安心感」となって自ら死を選びとることも多いのではないか。
■ネット上で自殺志願者が連絡をとりあい、集団自殺をすることも、しばしば起きている。それまでは一面識もなかった人が、ネット上で知り合い、おもに車のなかで練炭火鉢の一酸化炭素中毒で自殺する。
戦前、大島の三原山の噴火口で自殺した人のことが新聞などで大きく報じられた結果、三原山で自殺をする人が相次いだ。ぼくの子供のころでも、三原山というと「自殺」という言葉が真っ先に連想されたものだ。
■人間はイメージに弱いものである。つまり暗示に弱いのである。強制ではなく、「それとなく」道を示されると、そうかな……とその道にはいってしまう。イメージに左右されるのは、理性ではなく、気分である。個人の気分があつまって社会の「空気」が醸成されるのだが、この「空気」いちどできあがると、多くの人はその中で生きているので、この空気から抜け出ることが難しい。人口的に意識して、繰り返しによってこの空気をつくりだし個人の脳髄に植え込むのは、マインドコントロールの手法である。テレビコマーシャルなどに応用されている。
■いろいろな人や組織が、あの手この手でイメージを送り続けてくる。そんなイメージのシャワーから身を守る秘訣は、テレビを見ないことである。
一切テレビを見ないひとがいないこともないが、現代社会でテレビを一切見ないで過ごすことは、案外むずかしい。テレビからしか得られない情報もあるし、送り手は受け手が「気分よく」「楽しく」なれるよう、それこそ過剰なサービスで仕掛けてくる。居ながらにして、心地よく、世界各地で起こっている悲惨な情報、珍奇な情報、料理、風俗、ファッション等々を家庭に届けてくれる。
テレビの前では誰でも「王様」気分である。じつはこれが危ないのである。「裸の王様」などという言葉があるが、「王様」になってしまったらおしまいである。
■本日は脚本アーカイブズの当番。帰路、秋葉原で仕事をしようと思ったが、脳が疲れすぎていたのでやめた。帰宅しテレビをつけると、アメリカ中間選挙で上院でも民主党が勝利。ブッシュ政権は一気に求心力を失う。ブッシュべったりであった小泉政権。その後継者である安倍政権も大きな影響を受ける。世の中が大きくかわる兆しである。