コラム


by katorishu
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

 日本は堕ちるところまで早く堕ちたほうがいい

 11月10日(金)
■久しぶりに東京駅にいく。17時に文部科学省にいく約束があったのだが、早めにいって八重洲口周辺を散策した。結構、人通りが多い。乗降客がひっきりなしに交錯し、ここだけみていると「高度成長期」の東京駅周辺とかわらない。東京オリンピックが開催される前後の東京はエネルギーにあふれ、良い悪いはともかく熱気がありました。

■本日、谷川涼太郎氏の新著「友情の絆」を送っていただいた。「昭和30年代ミステリー」とサブタイトルがあり、「団塊の世代」を意識したつくりだとわかる。
 谷川涼太郎は金井貴一氏のペンネームで、金井貴一名でも、昭和史を素材にしたミステリーを何編も書いている。しばらく氏の著書に接しなかったが、健筆は健在であった。そのうち時間ができたら、読もうと思っている。

■文部科学省では脚本アーカイブズについて、担当官であった寺脇研氏が退官されるにあたって後任者への引き継ぎが行われた。終わって脚本アーカイブズ委員諸氏と京橋にあるラーメン屋で歓談。帰路、品川駅構内にある書店に寄り、ほっと安堵の息。二週間以上前から本棚に「北京の檻」が3冊おいてあるのだが、まったく売れない。品川駅で乗り換えるたびに眺めて寂しい気持ちになっていた。本日、売れていなかったら1冊買おうかと思っていたところ、2冊に減っていた。1冊売れたのである。

■自分の書いた本は子供のようなもので一人でも多くの人に読んでもらいたい。芝居をやっている人が一人でも多くの人に見てもらいたいと思うのと同じである。ごく一握りの「売れっ子」作家とちがって大半の著者は、「売れない」という現実の前で溜息をついているのではないか。ほかでも拙著の売れ行きのバロメーターがあるが、その数字を信頼する限りあまり売れていない。読んだ人からは、「感動した」「面白い」という情報がいろいろと寄せられているのだが、手にもとってもらえない。書き手として寂しい思いにかられる。「万年初版作家」と自嘲し苦笑もする。で、以下PRです。このブログをお読みの方、「北京の檻」(文藝春秋刊)、ぜひお手にとってみてください。図書館でも結構ですので、お読みいただけましたら幸いです。

■文部科学省からみながら、例のタウンミーティングのやらせ問題が、本日国会でも審議された。国民の教育をになう文部科学省がこういうことをやったのでは、世も末である。文部科学省の主導ではなく内閣府に出向した官僚のやったことと、文部科学大臣は答弁していたが。いずれにしても、姑息なことであり、こんなことで発言された意見を「世論」だとしてすいあげ、教育基本法改定の根拠のひとつにしようなど、とんでもないことである。現在、社会のモラルは地に堕ちているといってよい。下は上を見習うのが世の常である。各種の談合や汚職等々、リーダー層のモラルの荒廃がこんなにひどくては、国民は「ずるをして金儲けをした者勝ち」という意識をもってしまう。

■「団塊の世代」を中心にした層が戦後、物物物、カネカネカネを最優先して生きてきた。今、そのツケがもたらされているのだろう。バブル時期に精神形成をへた「団塊ジュニア」がそろそろ社会の中堅層になってきた。一度すりこまれた価値観から人はなかなか抜け出せないものである。だとすると、しばらくモラルは荒廃し続ける気がする。堕ちるところまで早く堕ちたほうがいいのかもしれない。坂口安吾ではないが、「堕ちよ日本人、地獄のそこまで堕ちよ」といいたくなる。
by katorishu | 2006-11-11 01:04