コラム


by katorishu
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映画『メトロに乗って』を見たものの 

11月13日(月)
■渋谷で夕方、映画『メトロに乗って』を見た。その前に旭屋書店にいったところ、音のうるさいゲームセンターにかわっていた。渋谷にある書店の中では、比較的良書がおいてあり、30年ほど前からよく足を運んでいただけに、ショックだった。近くに「ブックファースト」という大型の書店が出来たことの影響を受けたのかどうか。ブックファーストは「ビジュアル系」の雑誌などに比重をおき、従来の本屋というよりビデオショップの雰囲気で、本も探しにくいし、旭屋書店とはちがう類の書店である。

■ハードカバーの本を読む人が激減していることの端的なあらわれなのかもしれない。まだまだ読書人口は多いが、いずれ本を読まない人が圧倒的多数をしめるようになると、日本は後進国の仲間入りをすることだろう。
 さて「メトロに乗って」だが、浅田次郎原作で昭和39年の東京オリンピックにタイムスリップする話――という程度しか知らずに見た。堤真一が主演であるし、「三丁目の夕日」がよかったので、それとだぶらせ期待して見たのだが、見終わって「時間の無駄」と思った。ご都合主義のストーリー展開で、俳優陣はがんばっているのだが、物語が空回りしていて感動しない。

■スタッフはなにか勘違いしている、と思った。昭和30年代といっても、初期と東京オリンピックが行われた後半とは、東京の町の様子がちがう。時代考証的にも駄目だった。
この映画、ポスターのどこにも脚本家の名前がのっていなかった。映画のおわりに脚本家の名前が出てきたが、それとは別に「脚本協力」として別の人の名前がでていた。恐らく脚本の段階でもめて、脚本家は投げ出したか、クビにされたのかもしれない。監督かプロデューサーが別の脚本家をもってきて、大幅に手をいれたのだろう。なにより構成がまずく、設定もいただけない。原作はこんな駄作ではないはずだ。

■脚本軽視の精神が読み取れ、当然の結果として駄作。今村昌平監督は「映画が成功するかしないかの7割は脚本で決まる。演技が2割、監督など1割」と話していた。脚本軽視から世界に通用する映像作品は生まれない。こんな基本的なことがわからない「関係者」がまだ多すぎる。それでも、興行的には「成功」ということになるのだろうか。
by katorishu | 2006-11-14 00:05